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はじめに…
川岡大次郎 (KAWAOKA DAIJIROU)
1978年3月14日生まれ。大阪育ち。
特技は英会話、お菓子作り。
1997年映画「タイムリープ」でデビュー。
その後、ドラマ「最後の恋」「ビーチボーイズ」「てるてる家族」
映画「OPEN HOUSE」(行定勲監督)「19」(渡辺一志監督)などに出演。
筧昌也 (KAKEHI MASAYA)
1977年生まれ。東京育ち。
映画、アニメーション、イラストと幅広く手がける。
03年、自主映画『美女缶』が国内外の映画祭で数々受賞し04年劇場公開。
05年「世にも奇妙な物語」でセルフリメイク。
「ロス:タイム:ライフ」などショートフィルムを中心に活動中。
小説版「美女缶」の執筆も手がけ、05年12月末発売。
『35度の彼女』スペシャル対談
 筧昌也(監督)× 川岡大次郎(主演)
第1章
絵コンテで伝える妄想イメージ
――――今回、主演に川岡さんを迎えた理由はズバリなんだったのでしょう?

 
社会人になってから高校時代の女の子をふっと思い出すような年齢というと、やっぱり20代後半かな、と。それでいて彫りの深い顔だとストーカーみたいにも見えちゃうので、ちょっとカワイイ系の顔立ちの俳優さんにお願いしたかったんです。それでパッと頭に浮かんだのが、僕と同年齢の川岡さんでした。
川岡 
漫画チックな顔だってよく言われます。『ワンピース』の主人公にそっくりだって(笑)。
 
あ、似てる(笑)!まさに絵コンテで描きやすい顔ですね。実はね、今回ほど緻密に絵コンテを描いたのって7年ぶりなんです。
川岡 
いつもあんなに凝ってるのかなって驚きました。
 
ってのも、今回はイメージ映像でどんどん繋げていくっていう、まさに絵コンテがないと成立しないスタイルだったから。ミシェル・ゴンドリーっぽい、イメージの連鎖で心に触れる作品を目指したんです。
川岡
僕はあの絵コンテにすごく助けられました。僕にソックリなイラストも気に入りましたし(笑)。最初、筧さんからは「絵コンテ、見ます?見ません?」って聞かれて。
 
俳優さんの中には、前もって見たい人と、そうじゃない人っていますからね。
川岡
その点、僕は「見たい派」でした。そのおかげで監督のイメージがギュンと頭の中に入ってきて、自分がどう動けばいいのかよく分かりました。

ちゃんとスタッフにイメージを伝えなきゃ、っていう使命感はありましたね。なにせ今回は、全部で200カットありましたから。たった10分の映像なのに。
川岡
ショートムービーの常識を超えてますよね(笑)。実はね、僕も一本だけ撮ったことがあるんです。『サマータイムマシン・ブルース』の縁で作った、まさに予算ゼロの密室劇だったんですけど、全部で3カットくらいで終わっちゃった(笑)。

その作品、見たいなあ!いっそ「短編.jp」で配信しましょうよ!
川岡
それは心の準備がついてからってことで(笑)。でもさっきのカット数の話、筧さんの200カットにはまったくムダがないんですよね。よその現場だと本編で使わない予備シーンまでカメラ回すことってよくありますから。

僕はムダなく撮影するために、すごく周到な準備をしますね。自分のためにも。だけど現場では逆に“感覚”に任せて撮るくらいがちょうどいいのかなって考えたりもします。
川岡 
あ、僕の芝居もおんなじです。しっかり役作りするんだけれど、現場に入るといったんそれを忘れちゃう。そこからいかに自由になれるかで演技の深みが増していくような気がします。
第2章
僕らの同世代感覚、そして中2精神
――――かなり制約の多い現場だったようですが、川岡さんから見た筧組の雰囲気はいかがでした?

川岡
まず、24時間で撮るっていう企画自体が『24 twenty four』的ですよね(笑)。僕自身、筧ワールドについてしっかり頭に入れて行ったので、現場では安心して演技に臨むことができました。他のスタッフもそれぞれの仕事に集中できていたようで、とてもやりやすい環境でしたね。

やりやすいスタッフだからこそ、これまでにない複雑な題材に挑めるなっていう野心もありました。
川岡 
僕は美術さんの仕事ぶりにも感激しました。現場に入ると、妄想シーンで使うクレヨンで描いた“バス”が用意されていて、他にもきちんと黒子の皆さんがスタンバってたり。まるで「欽ちゃんの仮想大賞」に入り込んだみたいで(笑)。

あの妄想バスの手作り感はバッチリでしたね。美術さんが正確にイメージを把握してくれたおかげです。あと、教室の壁に貼られた「想像」っていう習字が全部「妄想」って文字に切り変わる細かいネタなんかも面白がって用意してくれたし。
川岡 
筧さんと僕とは同年齢だし、同年代のスタッフとも共通する価値観がありましたよね。ジャンプ、ミニ四駆、ビックリマン、ファミコンとか、たったそれだけの共通項で不思議な一体感が生れるっていうか。『サマータイムマシン・ブルース』のときもまさに同年代の役者ばかりだったんで、お互いすごく楽しくやれたんです。

あの作品には同年代のエネルギーが満ち溢れてますよね。僕らって、そういう共有カルチャーがまだ豊富に蓄積されてる年代なのかも。これがもっと若くなると、逆に個性の時代になってしまう。きっと共有部分がどんどん狭まっていくんじゃないかな。
川岡 
最近のエンターテインメントはどんどんターゲットが細分化されてますしね。トレンディ・ドラマを見逃すと翌日の学校で話題に取り残される感覚は既に消滅してしまってる。

実はね、僕は「中2精神」っていうのを大事にしているんです。中学2年生くらいの感覚でずっと映画を作っていきたい。14歳って年頃は子供の気持ちもよく分かるし、大人の手前でちょっとエッチなことにも興味がある。言わば、いちばんアンテナを張り巡らしている時期だと思う。僕はそんな中2のときの自分が興奮するような作品を作り続けていきたいんです。
川岡 
なるほど。中1だとまだ青いし、中3になると高校受験でそれどころじゃなくなる・・・

そうそう、メジャーとマイナーの中間って感じかな。恋愛に関しても、人生に関しても。で、僕らの年齢って、いまちょうど、そのダブルスコア。
川岡 
あ、ほんとだ!28歳!
1977年生まれ。東京育ち。 1978年生まれ。大阪育ち。
第3章
変化していくショートムービー
――――最後に、おふたりにとってショートムービーとは?


日本ではまだまだ発展途上で、“習作”ってイメージですよね。けれど、これが海外だと全然環境が違っていて、映画祭やマーケットでどんどん紹介されている。僕の『ロス:タイム:ライフ』なんてリトアニアまで行ってますからね(笑)。サッカーがテーマだと言語を越えて余計にテリトリーが広がっていくみたいで。
川岡
僕も前に『19』(渡辺一志監督)でドイツの映画祭に行ったとき、短編部門が盛り上がっていたのを覚えてます。みんなゲラゲラ笑っていて、すっごく楽しかったですよ。

日本だと受け手の準備ができてないってのはあるかもしれませんね。どうリアクションしていいのか分からない人がまだまだ多いのかも。
川岡
でも、きっとこれからでしょう。ようやくネットの環境も整ってきて、快適なスピードで見られるようになってきた。先日、ニューヨークに住む僕の友人が『35度の彼女』を観てくれたらしいんです。「これはアメリカ人でも楽しめる作品だよ!」って絶賛してくれて。こんなに距離の離れた彼らが僕の出演作を手軽に観れるなんて、ネット配信ならではですね。

クリエイターが長編を一本準備するのって莫大な予算と労力が必要じゃないですか。もっと気軽にどんどんアイディアを具現化できる環境ってのも必要だと思います。それこそ「句読点」の「句点」が長編映画だとしたら、「読点」となるべき発表の機会がたくさん存在しても全然いいんじゃないかな。
川岡
僕ら役者も同じなんですよ。テレビドラマや映画には既に決められたスタイルがあるけれど、もっとそれを打ち破るような新しいクリエイターと出会って、自分も一緒に作品作りに参加してみたい。まさに役者としての「読点」を模索しているような感じですね。
――――本日はありがとうございました!

インタビュー&構成:牛津厚信(映画ライター)http://cows.air-nifty.com/seagal/
(おわり)
川岡大次郎出演『サマータイムマシン・ブルース』DVD発売中
http://stmb.playxmovie.com/
筧昌也著『小説版 美女缶』発売中 http://www.bijocan.com
WEB漫画「THE不眠SHOW」毎月1、16日更新 http://www.x-tv.jp/
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