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2006年10月20日

『初恋のてんまつ』スペシャル映像

『初恋のてんまつ』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

一生忘れない、忘れられない、私の初恋・・・の、てんまつ。

監督:永田琴(NAGATA KOTO)
出演:夏生さち/落合扶樹/津村和幸/久我朋乃

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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全18話のスペシャル映像のアップを完了しました。
いよいよ明日21時より、劇場公開されます。
渋谷・ユーロスペースで、お待ちしております。

2006年10月19日

『wonderful swim』スペシャル映像

『wonderful swim』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

「あたし、ダイアモンドが大好きなの。」 その女は5つの名前を持っていた。

脚本・監督:飯塚健(IIDUKA KEN)
出演:奥貫薫/六角慎司/大堀こういち/田中健次/向井章介/矢柴俊博

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月18日

『バリガー』スペシャル映像

『バリガー』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

ある日、東京タワーのライトが突然、消える。ラッキーな出来事が起きた。

監督:柿本ケンサク(KAKIMOTO KENSAKU)
出演:渋川清彦/マメ山田/諸頭未優

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月17日

『夕凪』スペシャル映像

『夕凪』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

二段ベッドが一段になった。思ったより、悲しくなかった。

監督:安里麻里(ASATO MARI)
脚本:南川要一(MINAGAWA YOUICHI)
出演:福田麻由子/鈴木励和/森田亜紀/戸田昌宏

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月16日

『その山を崩せ』スペシャル映像

今井.JPEG

15年ぶりの同窓会。楽しくなかった。

監督:緒方明(OGATA AKIRA) 
脚本:川田雅子(KAWADA MASAKO)+緒方明
出演:今井祐子/斉藤陽一郎

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月14日

『WAITER』スペシャル映像

『WAITER』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

2月14日。待ち合わせに遅れることがあっても、行かないことはあるだろうか?

脚本・監督:日向朝子(HYUGA ASAKO)
出演:松尾敏伸/小山田サユリ/戸田昌宏/柳沢茂樹/田中要次

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月13日

『風見鶏と煙突男』スペシャル映像

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男は煙突にのぼった。そのころ女は風にふかれていた。
ある火葬場の午後のものがたり。

監督・脚本:富永まい(TOMINAGA MAI)
出演:柄本佑/中村優子

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月12日

『birthday girl』スペシャル映像

『birthday girl』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

二十歳の誕生日まで、あと2分。「海が見たい」と思った。

監督・脚本:長澤雅彦(NAGASWA MASAHIKO)
出演:JOSI/渡辺海弓/山岸拓生

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月11日

『世界でいちばん身体にいいこと』スペシャル映像

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2005年11月27日。晴れ。朝から、カラダにとてもいいことをしました。

脚本:古川裕也(FURUKAWA YUYA)
監督:本田昌広(HONDA MASAHIRO)
出演:宮澤美保/田中有紀美/滝沢涼子/湯澤幸一郎/山下葉子/響大祐/古澤龍児/朝岡実嶺/小澤敏彦

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2006年10月10日

『ピンポンッ』スペシャル映像

『ピンポンッ』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

バスに乗って会いにいきます。待っていて、ください。

監督:福岡芳穂 (FUKUOKA YOSHIHO)
脚本:いながききよたか+福岡芳穂
出演:泉綾香/山中敦史

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2006年10月09日

『宇宙のはじまりとおわり』スペシャル映像

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ある日、その小さな宇宙は前触れもなく始まり、唐突に終わった…

監督:矢部浩也(YABE HIROYA)
脚本:矢部浩也+及川章太郎(OIKAWA SHOTARO)
出演:前田綾花/奥村知史/風祭ゆき/宍戸錠

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2006年10月08日

『全速力海岸』スペシャル映像

『全速力海岸』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

この海岸には伝説がある。北に向かって祈りながら走ると願いが叶うっていうやつだ。

脚本・監督:中野裕之(NAKANO HIROYUKI)
出演:村上淳/渡辺真起子/綾野剛/細井ゆめの/森下能幸

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2006年10月07日

『世田谷リンダちゃん』スペシャル映像

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オトサン、ハジメマシテ! フツーな暮らしが、フツーでなくなった一日。

脚本・監督:タナダユキ(TANADA YUKI)
出演:鈴木慶一/白井良明/武川雅寛/ミハエラ・ガブリエラ/山下敦弘

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2006年10月06日

『35度の彼女』スペシャル映像

『35度の彼女』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

バスの中で高校時代のクラスメートを目撃。男は時空を超えて、シミュレーションを始める…

脚本・監督:筧昌也(KAKEHI MASAYA)
出演:川岡大次郎/山岸彩子/藤川俊生/矢崎学/皆戸麻衣/石川ユリコ

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2006年10月05日

『プリーズ、ウェイク・アップ』スペシャル映像

『プリーズ、ウェイク・アップ』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

「覚醒せよ」と誰かが言った。CM界の鬼才が描く、笑える悪夢。

脚本・監督:山内健司(YAMAUCHI KENJI)
出演:深浦加奈子/初音映莉子/古館寛治/西野まり

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2006年10月04日

『橘くんのバカ。』スペシャル映像

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次の日、橘君がトロフィーを持って、やってきた。

脚本・監督:村松正浩(MURAMATSU MASAHIRO)
出演:芳野友美/服部竜三郎/坪内守/酒瀬川真世

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2006年10月03日

『大安吉日』スペシャル映像

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それは、おだやかに晴れた一日であった。

監督:矢崎仁司 (YAZAKI HITOSHI)
脚本:狗飼恭子 (INUKAI KYOKO)+矢崎仁司
出演:宮下ともみ/河井青葉/諏訪太朗/風見章子/山岸彩子/センネット・チュターラック/趙珉和/岡村洋一/今愛鈴

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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2006年10月02日

『お別れのバラード』スペシャル映像

『お別れのバラード』スペシャル映像 [短篇jpオリジナル]

恋の話にお化け騒動。修学旅行の夜は色々な事があります。

脚本・監督:本田隆一(HONDA RYUICHI)
出演:山本浩司/緋田康人/大堀こういち/伊藤慎介/山中敦史/中田寛美/山本ヒロシとザ・パロッツ

『ハヴァ、ナイスデー』上映記念スペシャル映像です。
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公開日まで連日、全18話のエピソードを無料配信いたします。
お楽しみください。

2006年07月16日

『風見鶏と煙突男』(その3)

6月14日。曇り。
煙突は、無事に建った。天候も狙い通り。喪服と白い空、灰色の煙突とのコントラストが美しい。白っぽい空に昇る煙が表現しにくく苦労する。発煙筒を数本試してみて、やっと、撮影:石坂拓郎のOKが出た。
煙突は意外に高い。半間(約90cm)足場の上に2間の高さで屹立している。なぜだか、撮影現場では未だに尺貫法である。芝居をする煙突男:柄本佑の目の高さは、4m以上。恐怖感がある。安全面でのチェックは当然だ。何度もスタッフが実験してみて、マットや安全ベルトが用意された。それでも「やっぱり、怖いです」と柄本佑。それもそのはずである。彼の目線には、煙突+ビルの高さ(5階)が加わっている。
煙突男を見上げる風見鶏の遺影と参列者たち。その中に音楽:福原まりがいる。富永監督のCMやアニメ、映画音楽を作曲しているピアニストである。日本一遺影の似合う女として、現場にも参加してくれた。男性の参列者は、富永監督所属のピラミッドフィルム企画部の面々である。
撮影シーンの狂気とは裏腹に、現場はいたって穏やかである。監督もゆっくりと、丁寧にお芝居をつくる。石坂カメラマンもゆったりしたリズムであるが、カメラはずっと手持ちで、イントレを昇ったり降りたり、的確にアングルを決めていく。アソシエイトプロデューサー兼務助監督にはもう一つ仕事が増えた。操演である。風見鶏の演技を監督のセリフに合わせて操作する。意外や、楽しんでいる。誰一人、大声を出すスタッフはいない。淡々と現場は進行していく。日没が心配されたが、無事、夕刻までに撮影終了。ラストカットは、見事なタイミングでカラスが鳴いた。
素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年07月12日

『風見鶏と煙突男』(その2)

5案のプロットを検証する。贅沢な悩みである。富永監督得意のアニメーションをからめると面白くなりそうな企画もあったが、今回のルールだと難しい。2案に絞り、制作部が決定したら、相談することにする。
監督自ら、制作部と交渉。アソシエイトプロデューサー:関友彦が引き受けてくれた。大作の制作担当を経験しているので、心強い。企画は、制作部判断もあったが、直感していた『風見鶏と煙突男』に決定。
問題は、煙突である。ほんものに昇るのは危険でもあり、縁起でもない。火葬場でなくても、撮影に適した安全な高さの煙突などないだろう。低予算だが、思いきってセットをつくることにする。出演者や移動も少なく、撮影時間も短い。ワンアイデアを昇華するべく、予算書も研ぎすまされていった。アソシエイトプロデューサー兼務、助監督兼務、苦情受付担当を余儀なくされる。
キャスティングは順調に進んだ。監督の希望は煙突男:柄本佑。忙しいスケジュールのさなか、なんとか参加してくれることになった。水面下で暗躍してくださったピラミッドフィルムの原田雅弘プロデューサーに多謝。風見鶏は遺影と声のみの出演。交渉は難しそうだったが、企画に賛同してくれた風見鶏:中村優子が誕生した。衣装合わせと本読み、そして遺影の撮影を兼ねた打ち合わせで、二人のお芝居の温度を調節する。楽しくも黒いフィルムになりそうである。楽しみだった。
ロケ地も決まり、美術:舩木愛子・高橋徹の協力で煙突も無事に立つ予定、すべては順調だった。撮影数日前、屋上にセットを組む予定の建物から、撮影拒否の連絡。急遽、別の屋上を探さなければならない。限られた時間だったが、制作部の努力で、なんとかロケ地は決まった。写真を見ると、むしろ、こちらの方が企画にふさわしい気がした。運がいい。こういう時はいいフィルムが生まれそうな予感がするものだ。
(その3へ続く)

2006年07月05日

『風見鶏と煙突男』(その1)

『風見鶏と煙突男』
監督・脚本 富永まい
撮影日 2006/6/14
クランクイン   8:00@千駄ヶ谷
クランクアップ 18:30@千駄ヶ谷

10年ほど前、知人がサンダンス映画祭で受賞、映画を撮ったことがある。
映画界の人ではなく、某飲料メーカーの宣伝部員だ。いい脚本を書くチカラがあれば、映画が撮れる。経験も資金もいらない。素晴らしいシステムだ。
富永監督もその一人。『wool 100%』で2003年に受賞した。CMディレクターでもあり、アニメ作家でもある多才で、PFFでの『くろこげ』が印象に残っていた。同年の受賞作にウルグアイのホアン・パブロ・レベラとパブロ・ストール監督の『ウィスキー』がある。昨年日本でも公開され、話題になった名作だ。
<One Day Movie>の16話目、いちおうの区切りでもある。「短篇jpオリジナル」の新展開や制作システムの見直し、監督選考や交渉も難航していた。おまけに、信頼をおいているユーロスペース製作部が「フランス映画の東京ロケ」の制作協力が決まり、他の仕事を受けられない状態に…八方塞がり。
そんな状況の中、『wool 100%』のことを思い出した。富永監督の所属プロダクション・ピラミッドフィルムの田中誠一プロデューサーと連絡をとる。快諾。さっそく企画打ち合わせが始まる。CM制作のスパンは短い。その感覚に馴れているせいか、1週間後には、なんと5案のプロットが送られてきた。どれも面白いフィルムになる可能性のある企画だった。もう一つ、悩みが生まれた。
(その2へ続く)

2006年07月03日

『夕凪』(その3)

キッタハッタ、オトモツイタ

編集はそれまでの大人数での共同作業から一転し、少人数で平和な時間が流れる。といいながらも、作品完成の締切まであまり時間はなく、撮影終了後休まずすぐに編集にとりかかる。
安里監督が編集をしている場所に撮影の木暮洋輔さんが顔をだす。カラーコレクション、つまり画質の調整等を担当した石谷岳寛さんとも旧知の仲で、皆で画を見ながら意見を交わしていた。出来るだけ10分以内に作品を仕上げようと試行錯誤するが、物語のゆったりとしたリズムを優先し、多少長くなる。
音楽は長嶌寛幸さんにお願いする。“精密で野蛮なマン・マシーン”(……いいですな、このキャッチフレーズ(?))と呼ばれ、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(青山真治監督)や『エンジェル・ダスト』(石井聰互監督)などの音楽を担当されている方だ。精密で野蛮なマン・マシーンと女タランティーノなふたりですが、今回は落ち着いたピアノ曲を作る。トンネルであずさと肇が叫びながら走っていくシーンに音楽をあわせてみると、なんとも切ない。
音楽と同様、今回の作品は効果音がとても重要である。広場で羽を手にするところなど、無音や風の音といった音で表現する部分がいくつもあった。こだわり始めるとノン・ストップな安里監督だが、今回永口靖さんが解釈し用意した音は安里監督の思うところと合致しており、スムーズに整音作業が進む。

完成した作品に関し、福田麻由子さんが可愛い!という声が私の周りでは一番でした。また今までの安里麻里監督作品を知っている方は、静の動きも表現できるのだ、と衝撃を受けていました。
ご覧になった皆さんいかがでしたでしょうか?
右上にある、短篇JPお問い合わせフォームから、是非ご意見お聞かせください。
こんな短篇が見たいのだ!というアイディアでも結構です。(了)

2006年06月25日

『夕凪』(その2)

「1日で10分前後の作品を撮影するには、何回までの場所移動が可能なのか?」
つまり、物語上いくつの場所を描くのか。これまた毎度悩むことである。場所移動をすると変化に富んだ画が撮れてよい。しかし、移動し続けて演出に時間が取れないようでは本末転倒。さて、どんな1日となるのだろうか。
撮影当日、始発電車で集まれる一番早い時間に集合し、いざ横浜へ!
マンションの撮影から開始する。家具が全くない、誰も住んでいないマンションが撮影現場となるのだが、美術:岩本浩典、安宅紀史が生活感あふれる部屋へと飾りかえていた。設定どおり、母親と父親による温かい家庭が感じられた。最終的に画には映らなかったが、ベランダには空っぽの、洒落た鳥かごが飾ってあり、にやりとさせられた。この部屋からひとつひとつ物が運び出されていく。生まれてからずっと使っていた家具がなくなっていく。
福田麻由子さんは、その複雑な心境を見事に表現していた。シーンごとに監督と話し合い、お芝居を決めていく。バリガーのブログその1で、「23歳のころ何をしていたか?」という疑問が書いてあるが、いやはや11歳のころこそ、何をしていたんだろうか? 福田さんと同年代のとき……。いかん、ジャージの袖で鼻を拭いて、その袖がてかてかになってたことぐらいしか思い出せない。家族との別れとか、哀しみなんぞ、理解できなかったはずだ。いや、私と比較しても何の意味もないことだ。だが、福田さんの現場でのお芝居への取り組み方は脱帽である。鈴木励和くんも、夜中までの撮影だったが、凛々しかった。撮影前に一度お会いした際は20時を過ぎており、「普段はこれくらいに寝るんですよー」と、とろんとした目をしていたが、撮影ではとてもがんばっていた。
で、戸田昌宏さん扮する父親と、森田亜紀さん扮する母親は、何故離婚したのだろうか? 二人とも優しくて、他人を思いやる気持ちがあるように見えたのだが……。離婚とは、外からだと原因がわからないものなのかもしれません。なんて考えながら現場を見ていた。
撮影は深夜に終了する。翌日から編集作業の開始である。

2006年06月21日

『夕凪』(その1)

『夕凪』
監督:安里麻里 脚本:南川要一
撮影日 2006/6/2
クランクイン   8:00 横浜市中区柏葉
クランクアップ 24:30 横浜市中区柏葉

「1日で撮影出来る話を考えてください」
One Day Movieを企画するにあたって、何人もの監督に最初にお願いしてきたこと。これまた難しいお願いだ。1日で撮影出来ればどんな内容でもいいのか?いや、やるならば面白いものを作りたい。安里麻里監督と仕事をするのはこれで3回目。初長編作品『独立少女紅蓮隊』は“女タランティーノ”と称された、アクションの撮れる数少ない女性監督の一人である。しかし、今回はアクションではなく、新しいことに挑戦したい、と思った。
最初に監督からあがってきたプロットは、ラース・フォン・トリアーのキングダムなのかデヴィッド・リンチなのか、黒々としたものが渦巻く老いた悲しい男の話だった。不気味な物語で面白いのだが、企画:本田昌広からストップがかかる。
『短篇jp』を観る方々にとって何が面白いのか、どういったことにチャレンジできるのか……。プロデューサーと監督、私とでディスカッションを重ねる。
そして決まったのが『夕凪』。
物語より画面や構成を重視する安里監督にとって、初めて挑戦する分野だ。
主人公は11歳の少女。この少女を誰が演じるかによって、物語は大きく左右される。真っ先に福田麻由子さんの名が挙がった。両親の事情によって起こる、ある忘れられない1日。複雑な心境を1日という短い時間で演じるには、相当の演技力、集中力を要する。忙しいこと承知で福田さんの事務所にご連絡。そして快諾していただく。戸田昌宏さん、森田亜紀さんも監督からのたっての希望で決定。鈴木励和くんは、何人かの方に会った中で一番自然な無邪気さを持っており、福田さん演じるあずさとは対照的な存在としてぴったりだった。
出演者は決まった。しかし、この物語をどうやって1日にまとめて撮影出来るだろうか?撮影場所は『お別れのバラード』『バリガー』で大活躍をした(『お別れのバラード』では様々な仕事を兼ねてました)の制作:安井聡子が探してくる。マンションは横浜にあり、その周辺には変化に富んだ風景がいくつもあった。少ない移動でいくつものシーンが撮影出来る!と喜んでいたのだが、直前まで、本当に1日で撮影が出来るのか??と疑問があった……。

2006年06月16日

『バリガー』(その3)


小人の部屋はロケで行う事になり、何とかロケ場所は全て決まった。監督とロケハンをしていて、次第に私は、柿本監督の撮影現場はどのように進んで行くのだろうか?と興味が沸いてきた。はたして全て撮りきれるのだろうか、時間が無くなって来た時には素早い判断が出来るのだろうか?不安ではなく、どのようにうまくやるのか、見てみたかったのだ。
そんな期待もよそに、撮影現場は順調に進んでいった。撮影・照明・美術・録音と24時間という短い時間の中でも信頼や安心の出来るスタッフの皆さんに恵まれたからである。
途中、お弁当を食べるシーンの場所移動の時間を削って急遽駐車場の脇で撮影をしたけれど、なんとか無事に昼間の場面を撮り終え、ナイター撮影に突入。東京タワーが消えて、ナレーション撮りが終わったのは、朝4時を向かえていた。柿本組のスタッフの皆さん、過酷な時間との戦いの中ご協力いただき本当にありがとうございました。無事に撮影終了。

編集の得意な柿本監督がどのようにこの撮影素材を仕上げ、合成するのか、わくわくしながら、編集を待つ事になった。(主人公の部屋は実は1Fで、もちろん東京タワーは実際に見えない。)私は次の安里監督作品の準備も佳境に入った頃、事務所に柿本監督がやってきた。バリガーの完成テープを見せに来てくれた。安里組のスタッフも一緒に上映会が始まった。
リズムの良さに脱帽。私が引いてしまった台詞は音楽のように、映像のリズムに乗って、入ってくる。ズームももちろん完璧に計算されていた。ああ、もう柿本さんの頭はデジタル世代なのだと思い知った。そしてこれからはデジタル世代がやってくると、、、。

最後にまた柿本監督はテレくさそうに「じゃー」と肩をたたいて帰って行った。5年後か10年後かに柿本さんと一緒に仕事が出来れば、きっと新たな発見が出来そうで期待している。柿本ケンサク。目の離せない監督と仕事が出来た。
台本のタイトルを見た友人が「バリガーってガリバーの逆なのね。」と言われた時に初めて気がついた。あれ?逆から呼んだだけだったんだ。

ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年06月12日

『バリガー』(その2)

ロケハンで苦しんだのは、やはり小人の家だった。当初、監督はセットを組む事を希望していた。ひろみ役のマメ山田さんを合成でさらに小さくすると。美術部とも相談の結果やはり予算を考えるとセットは難しい。ミニチュアで合成する方法かロケセットでの撮影のどちらかの方法を検討する事になった。正直にいうと私はまったくロケハンのあても、発想も浮かんでこなかった。①小人の家②東京タワーの見える部屋③小人が出てくるトンネル。。。予算や時間を考えると、いや予算があったとしてもどっから探せばいいのかわからなかった。自分の発想の貧困さにへこんでしまう。監督とのコミュニケーションもうまく取れない。
そんな時、ラインプロデューサーより某都内の洞窟を小人の部屋にしてみては?とアイデアをもらい、監督と二人ロケハンに出かけるも、撮影許可がどうしても降りなかった。その洞窟を監督はいたく気に入り大喜び。でも撮影は出来ない。小人って東京の何処に住んでいるのだろう?その夜、監督からこのままではなんですから、話しましょうと飲みに行った。あーでもこーでもないと、色んな話をお酒の力をかりながら話した。この企画の醍醐味は少人数での撮影の為、監督ともざっくばらんに話が出来る。その夜も今までのコミュニケーションを埋める以上に有意義な話し合いだったと思った。けども、小人の家はどんな所なのだろう?自分の引き出しの少なさに、困ってしまった。
マンホールの遊び場のある公園、子供の玩具用の家、、、天井の低いトンネル、ツタのからまる屋上、、、そして何よりも24時間での撮影可能な撮影場所が必要だった。
うーん困った時には、、、師匠に聞いてみたところ、埼玉県の吉見百穴を教えてもらった。
百穴?インターネットで調べると穴だらけの山を発見!これだー!けど埼玉だー。移動時間はもったいない、、、。監督に電話してみると、是非行って見てきてくれとの事。こりゃーもうココで撮影するしかない。
(その3へ続く)

2006年06月07日

『バリガー』(その1)

『バリガー』 
監督・脚本 柿本ケンサク
撮影日 2006/5/15
クランクイン   8:30@埼玉県比企郡吉見町
クランクアップ 翌4:00@芝公園

あれは、全作品の『お別れのバラード』の衣装合わせの最中だっただろうか?バタバタと事務所の中を右左としていた時、奥のテーブルでは、マネージャー付きの監督と小さなプロデューサーが打ち合わせをしていた。理由はわからないが、何故か私は『バリガー』を撮る前の監督・柿本ケンサクさんに「お幾つですか?」と挨拶もそこそこにまず聞いた。
「23です」さわやかな第一印象だったと思う。
 23歳の頃、私は何をしてたっけ? とある映画の宣伝で、右も左も分からずに東京砂漠の砂を食べていた時ではなかったであろうか。前作の撮影が終わって休日を取った後にやっとこさ『バリガー』の台本を読んだ。本作品を観ていただいた皆さん、主人公のナレーションの台詞を文字に、声に出してみてください。そりゃー最初に読んだ時は、そのくさい台詞にびっくりしたどころか、ちょっと引いてしまったくらいだ。(あくまでも個人的趣味の問題ですが)
監督との最初の打ち合わせには、なんと私は1時間も遅刻してしまい、なんとか2時間後に時間をいただいた。柿本監督は忙しいのだ。何本かのPVを撮影・編集を平行していた。
最初の打ち合わせはでは、虚勢的、攻撃的に監督はロケ場所のイメージを言っていたように思う。なんだかんだ話をした最後にやっとニヤリと二人で少し笑い合えた気がする。それは、お互いに人見知りで少し気取ってたのをやっとやめた時だった。昔の23歳の自分と柿本監督が同じにちょっとだけ思えた。
しかし、この予算の中では…出来そうに無い事だらけだ。
(その2へ続く)

2006年06月03日

『お別れのバラード』(その3)

脱獄囚たちが逃げ込んだ空き家は線路のそばであった。録音:古谷正志も本田監督の初期作品からのクルーの一人だ。彼の天敵となったのは、電車の通過だったが、田舎ゆえ1時間に2本。中断も少なかった。
撮影現場の雰囲気は、とても温かだった。学生時代から一緒にいるチーム。精神はそのままで、技術と経験値が進化した集団は強い。商業映画の現場にありがちなヒエラルキーによる障害もなく、自主映画にありがちな泥沼な試行錯誤もない。スタッフもキャストも自由に仕事を楽しんでいる。助監督:菊地健雄も活き活きと現場を仕切っていく。
アソシエイトプロデューサー:大野敦子たちは「消えモノ」(劇中の料理)を鋭意制作中。シーン撮了後、スタッフの食事の時に、残った惣菜やみそ汁が振る舞われる。これも、ささやかだけれど、温かい現場の象徴であった。
本業以外の仕事をしてくれたのは、制作・美術・衣裳・特殊造型:安井聡子の他、ヘアメイク:戸田のり子。かつらを被り、幽霊役(ネタバレ注意)を買ってでてくれた。
空き家での撮影を一気に撮影して、ザ・パロッツの面々と合流。ライブハウスへと移動する。これまでのシーンとはうってかわった設定。さながらPVの撮影風景である。早朝から出ずっぱりの山本浩司、そして奮闘してきた本田監督もバンドのコスチューム(ネタバレ注意)に着替えた瞬間、また一段とエネルギッシュになる。
午前4時、撤収完了。ロケバスの中は、さながら修学旅行の帰途のようだった。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年05月30日

『お別れのバラード』(その2)

明解な脚本は、ゴールがよく見える。準備も明解に進んでいった。
本田監督を「ホンチ」と呼ぶ制作部:安井聡子も、大阪芸大出身ならば、撮影:川口良介と撮影助手:近藤龍人も同じ時期に大阪芸大で映画を製作していた。近藤龍人は、『どんてん生活』『バカのはこ船』『リアリズムの宿』の撮影でもある。呼吸の合ったスタッフとキャストで固められたのも、運がよかった。
安井聡子の肩書きは、「制作・美術・衣裳・特殊造型」である。学生時代の勢いなのか、低予算の現場では、できる人ができることをやる…という感覚。衣装合わせの日、衣装のみならず、その加工や特殊メイクの材料等を準備して、監督の意に沿うように、実演してみせる姿は圧巻だった。このフィルムは、監督の明晰な設計図や痛快な演出力もさることながら、彼女の八面六臂の活躍にも支えられていた。(あ、重要な役どころで出演もしています)
キャストたちも穏やかな雰囲気。山本浩司は監督作品があり、大堀こういちは自らのユニットHANAKUSONSや桑原茂一のCLUB KINGでは脚本・監督や作曲を担当、緋田康人は映画プロデューサーの経験がある。本田監督との本読みを見ているだけで、笑えた。面白いフィルムになる予感がした。
(その3に続く)

2006年05月24日

『お別れのバラード』(その1)

『お別れのバラード』 
監督・脚本 本田隆一
撮影日 2006/4/23
クランクイン   9:00@神奈川県駿東郡小山町
クランクアップ 翌4:00@神奈川県厚木市旭町

『東京ハレンチ天国・さよならのブルース』『セクシードリンク大作戦・神様のくれた酒』『プッシーキャット大作戦』『ずべ公同級生』…タイトルで観る気になるかならないかは、分かれるところである。この60年代の匂いがぷんぷんする作品群を立て続けに観てしまっていた。1974年生まれなのに、この憧憬と執着。監督に興味をもった。
OneDayMovieシリーズ『世田谷リンダちゃん』(監督:タナダユキ)に出演していただいた山下敦弘監督に、大阪芸術大学映画学科のことを取材していた。98〜2000年に発表された『鬼畜大宴会』(監督:熊切和嘉)、『東京ハレンチ天国・さよならのブルース』(監督:本田隆一)『どんてん生活』(監督:山下敦弘)は「卒業制作」である。さらに、山本浩司、元木隆史、向井康介、山本剛史、宇治田隆史…とんでもない才能を輩出している。奇跡の世代かもしれない。
大阪で「トキワ荘」的な映画漬け日々を過ごした監督たちが、東京で活躍している。彼らと仕事をしてみたいと思うのは自然だし、安直だ。そして当たり前のように売れっ子の監督となっていて多忙。このちっぽけな企画の趣旨に賛同してくださっても、実現は難しかった。
『全速力海岸』(監督:中野裕之)の撮影現場で、ディケイドの佐伯社長と雑談。所属俳優の山本浩司と本田監督のバンドの話になる。監督と俳優スケジュールの空白の部分をピンポイントで狙う作戦である。可能性大とか。一方的に、身勝手に、企画は進展した。
柔らかい監督。こちらの思惑もやんわりと吸収してくださり、より刺激的な展開を見せてくれる。一回の打ち合わせ後、すぐに第一稿が送られてきた。面白い。「何かが起こりそうで起こらない」ことで、ぐいぐいと観る人を引っ張っていき、最後は、唖然と煙に巻くシナリオだった。返信すると、さらに設定はほぼ同じではあるが、まったく解釈の違うシナリオが添付されていた。これも不思議なフィルムになりそうだったが、あえて、第一稿を推敲していただくことにする。このスピードと完成度の高さに、感服。現場の心配事は霧散した。
(その2に続く)

2006年05月19日

『橘くんのバカ。』(その3)

1日順延しての撮影日は大安。
やっぱり日柄がいいのでしょうか?みごとに晴れました。最初のシーンは、カスミ役:芳野ゆみが部屋で目覚めるシーンです。飾り込んだ狭いワンルームに、出演者、スタッフが入ると足の踏み場もない状況。お互いの息がかかるくらい、ぎゅうぎゅう詰めのなか、淡々と現場は進んでいきます。橘くん役:服部竜三郎も外のシーンから合流。前日の本読みで感じをつかんだのか、二人の台詞のやりとりもスムーズで、撮影は順調に進んで行きます。
午後に入り、川沿いを二人が歩くシーン。4月の半ばとはいえ、まだまだ肌寒い中、上流に向かって、全員で歩いて移動しながらの撮影です。映画の中だと一瞬ですが、後で調べてみると、出演者の二人は、4キロぐらい延々と歩いていました。当然、スタッフも機材を持ちながら延々と4キロ…。日頃の運動不足を嘆きながらも、みんながんばってくれました(お疲れさまでした)。
日没までに川沿いのシーンを終わり、博多駅東にあるボーリング場に移動です。映画のオープニングとエンディングのシーン。この二つのシーンのためボーリング場ワンフロアーの約半分を借り、エキストラも30人近く投入という、予想以上に大掛かりな撮影になり、制作部をはじめ各スタッフは、段取りに追われバタバタです。そんな喧噪をよそに、村松監督は冷静に二人の芝居を作り上げていきます。「12時までにエキストラ分は終了したいんですよ…」そんな制作部からのお願いも、見事にクリアー。11時50分クランクアップ!
撮影終了後、喪服姿の30人が、ぞろぞろとボーリング場から出て行く姿は、不思議と微笑ましい光景でした。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年05月15日

『橘くんのバカ。』(その2)

『時間の使い方の最も下手なものが、まずその短さについて苦情をいう。』誰が言ったか知りませんが、昔の人はうまい事をいうものです。この格言に従うと僕なんかは、最も下手な人間の一人かもしれません…。
軽やかにスタートを切った(かに見えた)村松組ですが、ご多分にもれず苦難の連続となりした。その多くは時間のなさが原因だったりするのですが…。
3月上旬、福岡で再会した監督と慌ただしくシナハン、その日の夜にプロットに関して打ち合わせ。あっさりとまとまって、ここまでは順調。東京に戻った村松監督から第一稿が送られてきて…。ここからが、僕たちの苦しい戦いのはじまりでした。
まずはシナリオ。“1日で撮影”“およそ10分の作品”この条件をクリアーしているのか、監督とシュミレーションを繰り返し、何度も書き直していただきました。『プロットの持つ素敵な世界を壊さず、なおかつ、物理的な条件をみたす』あたりまえの事ですが、やってみるとこれが本当に大変。限られた時間のなか、最後まで辛抱強く、僕達に向き合ってくれた村松監督に感謝です。最終稿があがったのが撮影3日前、時間的にはギリギリのタイミングでした。
シナリオの進行と平行して、スタッフ、キャストも進んで行きます。比較的あっさり決まったスタッフに対して、キャスティングは難航です、主演のカスミ役がなかなか決まらず、決まったのが撮影4日前、これもギリギリでした。無理な条件(福岡、3日拘束)にも関わらず、最後までがんばってくれた吉川事務所の皆さんに感謝です。
そんな準備に追われているうちに、時間はどんどん過ぎて行きます…。
『何故1日は24時間なのか?』と現実逃避的思索をめぐらしているうちに、監督以下ぞくぞくと福岡入りです、もう待ったなし。撮影前日に本読みと最終確認。顔を合わせて、一つ一つ確認していくと、大丈夫な気になってきます。こんなに便利な時代になっても、やはり直接あって話し合うという、アナログな事が大事なんだと実感します。後は当日の天気、こればっかりはどうしようもありませんが…。予報は雨…、撮影日を仏滅にしたせいかどうかは分かりませんが、ともかく雨。苦渋の決断で1日順延、明後日の天気にすべてをたくすことになりました。(その3へ続く)

2006年05月10日

『橘くんのバカ。』(その1)

『橘くんのバカ。』
監督 脚本 村松正浩
撮影日 2006/4/12
クランクイン    9:00@福岡市唐人町
クランクアップ  23:50@福岡市博多駅東

村松正浩監督は、長篇デビュー作『シンク』で、97年ぴあフィルムフェスティバルグランプリ。98年に同作品は異例の劇場公開と、ど派手なデビューを飾った映画監督です。DVで撮影という手法が、今ほどメジャーではなかった頃(当時はまだまだ8mmが主流だったと記憶しています)『シンク』という作品は衝撃的でした。「今回お願いするならこの人!」結構簡単に自分の中で答えはでました。
答えが出たは良いけれど、依頼を受けてもらえるかどうかは別問題です。
低予算・インターネット配信・撮影1日・DV撮影、結構ハードな条件です、さらに、こちらにはもう一つ厳しい条件がありました…。
メールでのやり取りの後。2月下旬、寒風吹き荒むなか、監督と渋谷で待ち合わせ。お茶を飲みながら、企画意図・具体的な条件を説明、そして最後にこちらの譲れない条件を伝えました。「いいですよ、よろしくおねがいします」監督の軽やかな返事でした、逆にこちらが慌てるくらい、あっさりとオッケーでした。出会って1時間たらず、OneDayMovie第8弾作品の福岡ロケはあっけなく決まりました。
「プロット書いてみます、でも一度福岡にシナハンに行きたいですね」
ごもっともです。監督にとっては、縁もゆかりもない街、そこで1日で短篇を撮ってくれと言うのですから、随分乱暴な話です。せめてそれくらいはと、こちらも心の準備をこっそりしてました。
プロット・スタッフィング・キャストなどなど、お互いに多くの宿題を持ち帰りつつ、福岡での再会を約束してその日は別れました。
(その2へ続く)

2006年05月05日

『woderful swim』(その3)

撮影当日は、快晴!天気予報が当たらなくてよかった…。最初のシーンは、新聞配達の大堀こういちさんが、ポストに新聞を手裏剣のように投げ込むシーン。100部近い新聞が見事!ポストに突き刺さりました!!(実際の映像を見て下さい。本当です)
主演の奥貫薫さんの登場。早朝からイキナリ全力走りです。自転車を追いかけるシーンなのですが、奥貫さんの足が思ったより早いのに驚きました。「おー!」と拍手する反面、今日一日持つかな〜。不安が半分。
塀を乗り越えるシーン。オープニングです。この塀、結構高さがあります。ダンボールを下に重ね、クッションを作りましたがそれでも上に登ると怖いです。奥貫さん勇気を持って飛び降りていただいてありがとうございました!
それから日が落ちるまでひたすら走るシーンです。書くことが何もありません。唯、ひたすら走っていただきました。キャストの方々、「もし明日、仕事が入ってたら使いものにならないだろうなあ」などと少しは思うのですが、作品の為なら人間鬼になれるもの。途中からそんなことは考えなくなりました。日が落ちる直前に、走るシーンは無事終了。さすがの奥貫さんも「もうこれ以上は走れなかった…」お疲れ様でした。
川崎から大田区に移動し、ナイトシーンの撮影。本当は早朝のシーンなのですが、撮影部の方がどうにかしてくれる。「撮影部に甘えるな!」といつも怒られます。夜中12時過ぎオールアップ!怒涛の一日でしたが無事故、無違反。本当にお疲れ様でした!映画の撮影ってとても大変なのですが、良い思い出と良い友達がまた増えた。そんな感想です。 
(了)

2006年05月02日

『wonderful swim』(その2)

準備期間をたっぷりかけて撮れる映画って最近はなかなかないもので…。今回もしびれるくらいタイトでした。
主演の奥貫薫さんを始め、キャストは割りとすんなり決まりました。(各プロダクションの皆さん本当にありがとうございました!)個性ある俳優陣が揃い、まずは大満足。なかなか豪華な顔ぶれです。
大変だったのはロケ地探し。車で並走撮影しやすい場所を何箇所も、しかも一日の撮影なので、同じ場所で固めなくてはなりません。撮影監督の小川さんのアドバイスで、ロケ地は、川崎の浮島近辺に決定!行ってみると道路も広いし、工場地帯でなかなか面白いロケーションでした。早速、道路使用許可の申請を出し、車止めの許可もすんなりおりそうな空気。「いつ許可おりますか?」返事は撮影の前日でした。意外と綱渡りの仕事だったことをあらためて実感…。しかし!許可がおりたとはいえ、工場地帯を爆走する大型トラックを本当に止められるのか?一つ間違えば大事故につながります。急遽、前作でお世話になった警備会社に連絡し、車止めの超エキスパートにスタッフに加わっていただきました。
以下、飯塚監督の次回作を手掛けるスタッフで固めることが出来、やっとひと安心。
でもまだアウトラインが見えただけで、細かい詰めは全く出来てない!「おまえ本当にだいじょうぶなのか!(ワンダフルスイムより引用)」「何とかなりますから大丈夫です!」と根拠のない自信をアピールするしかなく…。最終の打ち合わせが終ったのは撮影前日の夜中でした。あとは、当日の晴天を祈るのみ。しかし予報は雨のちくもり…
(その3へ続く)

2006年04月26日

『wonderful swim』(その1)

『wonderful swim』
監督・脚本 飯塚健
撮影日 2006/3/4
クランクイン   8:00@川崎市汐入
クランクアップ 翌1:00@恵比寿

ショートムービーなので、パワフルでスピード感があるものが良い!スピードといえば走ること!!などと考えている間に脚本があっという間に上がってきてしまいました。
脚本・監督は飯塚健。彼の映画にはいつも人間、自転車、車を問わず、印象的な走りのシーンが出てきます。今回は主演女優が走りっぱなしというパワフルムービー。
ストーリーは至ってシンプルで、結婚詐欺を重ねる女が、過去に騙した男どもにひたすら追いかけられるという話。
飯塚監督との最初の打ち合わせ。脚本の内容に関する打ち合わせはあっという間に終了。
その後は果たして脚本通りに撮れるか否かの現実的な話に終始してしまいました。複数のキャストが全力で走って車で並走。車止めに何人必要なのか?キャストの体力が持つのか?CG使わずに出来るの?等々。結論は出来るか出来ないかではなく、やらなければつまらない映画になってしまうということでした。(う〜む良い大人が出す結論ではないなと思いつつ…)
映画の企画、脚本は成立するまでとても時間がかかるものですが、今回はスピード決着で、(なんて言うと脚本書いた飯塚さんに怒られそうですが)順調なすべり出しのように思われました。
が、これからが「時間がない!」「ロケ場所が見つからない!」「人が足りない!」というプレッシャー地獄と葛藤の始まりでした。
(その2)へ続く。

2006年04月24日

『初恋のてんまつ』(その3)

2月19日。寒い一日になりそうでした。予報は雨でしたが、降って欲しくなかった。ほぼ一日中オープンのロケ地を移動していく設定。まして、14才の「駆け落ち」です。悲惨なフィルムにはしたくなかったのです。
撮影を始めて、スタッフ一同が眼を見張ったのは、奈津役:夏生さちの演技です。本読みから中1日、激変していました。緊張がとけたのか、現場にも馴染んで、冗談すら言うように。10代の柔軟な感受性を感じました。
永田監督と撮影:福本淳、照明:市川徳充は岩井俊二監督のクルーとして育ちました。息も合っています。撮影は、順調に進んで行きますが、犬のシーンで難航。なかなか犬が言うことを聞いてくれません。押していく香盤表、下がっていく気温。なにしろ、2月の深夜です。寒い。しかし、隆史役:落合扶樹は元気です。若い。撮影そのものを楽しんでいるようです。キャストたちのエネルギーはスタッフにも伝わります。天にも届いたのか、予報は外れてくれ、雨は降りませんでした。
最終シーンは、トンネルの中の、もっともデリケートなシーンです。撮影開始は午前5時ちかく、夜が空けてしまうのではないかと慌てます。しかし、すっかり奈津と隆史になった二人は、見事に演じきりました。OKが出て、撤収を始めるころには、美しい朝日が昇り、冷えきった身体を暖めてくれました。かなり疲労しているはずの二人ですが、最後まで元気、最後まで冗談と笑い声が絶えませんでした。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年04月18日

『初恋のてんまつ』(その2)

目にとても力がある、清々しい人だ。奈津役:夏生さちと初めて会ったのは、2月12日のことでした。永田監督、制作進行:宮本智寛と三人で羽田空港の喫茶店で待っていると、マネージャーさんとともに、ちょっと大きな制服を着て、スポーツバッグを斜めにかけて夏生さんはやってきました。その強いまなざしは特別に人をひきつけるものがあり、奈津役にぴったりだ。一日間で厳しい撮影現場となることをお伝えするが、「やりたい」という強い意志に満場一致でお願いすることとなりました。
夏生さんは本格的なお芝居は初めてということもあり、隆史役を落合扶樹さんにお願いする。落合さんは年齢だけでなく演技経験の上でも先輩で、夏生さんとのお芝居をリードしてゆく形となった。
二人は、撮影前々日に、台本の読み合わせの場で初めて顔を合わせる。緊張してか、なかなか思うように芝居が出来ない夏生さん。永田監督は明るく場を和ませながら演出をしていく。その日は深夜までとなったが、粘り強い練習が続く。「撮影当日宜しくお願いします!」との元気な挨拶で終了。撮影:福本淳と永田監督は、主人公二人の芝居を見て、深夜にも関わらず、どう撮っていくか打合せをすると言って消えていく。
皆の意気込みに脱帽。まだまだ夜は寒い2月。深夜、ずっと外での撮影になるがきっとこのキャスト・スタッフならば粘ってくれるに違いない。そう期待をして撮影当日を迎えるのだが…
(その3へ続く)

2006年04月12日

『初恋のてんまつ』(その1)

『初恋のてんまつ』
脚本・監督 永田琴
撮影日 2006/2/19
クランクイン   9:00@多摩市
クランクアップ 翌5:30@八王子市

「女の子の夢精みたいなモノを描きたい」
永田監督からの企画に対する説明書き。A4一枚のあらすじに添えられたそのコメントが届いたのは2006年1月の半ばでした。「初潮」「中学生の駆け落ち」、「赤飯」というほほえましい出来事を夢精と表現するとはどんな監督なのだろうか? これが『初恋のてんまつ』に対する最初の興味でした。
監督とお会いしてみると、とても陽気で活発な方でした。まー元気。今までの作品を拝見するに、女性的なかわいらしさを大切に、いやらしい部分なく等身大で描いている。『初恋のてんまつ』も今までの作品に通じるところがあり、是非作品にしよう、ということになりました。
永田監督や企画:本田昌広、撮影:福本淳、ラインプロデューサー:金森保らと打合せを重ね、奈津の世界をより具体的なものにしていく。男性はむろん初潮を迎えたことはなく、ある種想像するしかない。男性陣が監督から説明を受けることもありました。「初潮」は女性が大人になる過程で誰しも通過することだが、とても個人的な事。それを大人になってから思い出すのは懐かしく、甘酸っぱいものでした。作品をご覧になった皆さんは、どう思われましたか? 男性と女性で受け取り方が違うものでしょうか…
(その2へ続く)

2006年04月08日

『全速力海岸』(その3)

3月9日。
早朝曇り気温9度九十九里片貝海岸。天気はなんとか一日もちそうな予感。冷たい風が身体にしみ浜辺の砂が眼と口に容赦なく侵入。ホットビジョンのセッティングが着々と進む一方で、人物のみのカットを着々と進めて行く監督以下スタッフ。中野組さすがに手練な進行具合、全速力スタッフだねえ。
カメラがホットビジョンに搭載。ホットビジョンの爆走とともに全速力キャストの登場。まずは野村役:森下能幸が寒風吹きすさぶ九十九里をスーツ姿で全速力5本、砂浜ダッシュはたいへんです。乃木役:綾野剛は剣道着姿でまずは港を全速力10本。岐阜一の中距離ランナーの姿はまさしくは疾走。山岸役:村上淳と綾野剛の立ち回りでも小回りのきくホットビジョンは大活躍。お笑い?な戦いに躍動感をもたらしてくれる。でも360度回転撮影はスタッフ隠れるのにひと苦労。
午後からは寒風&砂嵐の浜辺でホットビジョン再び爆走!! てことはキャストも全速力なわけで….村上淳は不安(走れるの?)を一掃する砂浜ダッシュで全速力10本。綾野剛は再び岐阜一疾走全速力10本。由美役:渡辺真紀子はヘアもメイクもあるもんかで全速力15本。森下は午後の追加で全速力6本。
好子役:細井ゆめのは寒風のなかテープ担当でひたすら立たされたあげくに全速力5本。古い体育会のしごきのように、中野監督繰り返しテイクを重ねて行く「もう1回お願いね」 あのやわらかい声はこういう時に有効だね。
薄曇りで安定していたとはいえ8時から17時で無事撮影完了。骨まで冷えて髪の毛も口も耳も鼻も砂だらけになりながら、走り回ってくれたキャストもスタッフもほんとうに全速力な人々でした。
みんなの願いがひとつでも叶いますように…だってここは伝説の…
ナイスな1日をありがとうございました。

ちなみに編集でも中野監督は全速力な人でした。(了)

2006年04月04日

『全速力海岸』(その2)

2月初旬さすが全速力って訳には進まずで、アソシエイトプロデューサー:大野敦子、ラインプロデューサー:金森保からホンいつ頃ですかねえ?とやんわり問い合わせが。多忙な監督ゆえに短編に専念してとのお願いもできないので
3月前半の撮影予定の情報だけを入れ待機。
待つこと2週間。週明けに会いましょうのメールが届いて、撮影まであと何日だという心配が少し募りつつ、脚本打ち合わせにのぞむ。想像以上のオバカでヌケのよいお話が。撮影場所も目星あるんですよなどと話早いはこの人は。
お金無いから音楽はどうしようかねえという課題が残りつつ、ホンもロケ地も決まり次なる大事はキャスティング。低予算の作品なのに贅沢な人ばかりでも、中野監督の威力抜群ですんなり決定。バンドのボーカルでもある乃木役:綾野剛の曲。聞いてみるとすごくいい感じなのでキャストついでに音楽まで決定さすが全速力早いねえ。
そして監督から唯一のお願いがホットビジョンを使いたい。初めて聞く機材、それって?説明を受けスタッフ一同、全速力の源なりと。さてさて準備万端と思いきや、どうもお天気が微妙。降雨率50%で海岸でのロケはそうとうやばいですよ。<One Day Movie>ゆえのぎりぎりの判断が…
決行か順延かもやもやしたままロケの2日前。
天候はなんとかなりそうでひと安心…と、キャスト1名急病で降板だって。代役探しで撮影前日も全速力。
(その3へ続く)

2006年03月29日

『全速力海岸』(その1)

『全速力海岸』
脚本・監督:中野裕之 
撮影日 2006/3/9 
クランクイン   8:00@九十九里片貝海岸
クランクアップ 17:00@九十九里片貝海岸

1月初旬、第1期配信は力作だらけなので、ちょっとプレッシャーを感じつつどないしょうかなと打ち合わせを始める。
映画的ものコント的?なものはあるので、同じ方向はやめようではどちらに行けばよいのだろう。
疾走感やノリのよい作品がないからそちらに行こう。
なんてポンポン話が進んでゆくうち、中野監督の名前があがっておりました。
コマーシャルでは何本かご一緒させて頂いたことはあるものの、色々条件の多い<One Day Movie>を受けてもらえるかは一抹の不安はあるも電話してみようと。なかなかつながらぬ監督の携帯にアプローチすること数回。
受けてくれるかなあの不安がジョジョに‥「はい、中野です」のやわらかい声を聞いたとたん不安がなくなり短編.jpの主旨とお願いをとうとうと話しており
「面白いことやれるならやりますよ」とのやさしい返事を聞いたときは少し感激。
1月末、中野監督と最初の打ち合わせで再び短編.jpの主旨と映像的かつダイナミズム?とかスピード感があるものがやりたい(小声になって)金はないけど‥など話し終えるやいなや「なんとなくやりたいことあるんだよね」との発言。
それがひたすら走っている男の話。走るとなると画になるのはやっぱり海岸じゃない。でも青春の巨匠みたいなのはガラではないし、なんか伝説の海岸があってそこ走ると‥てなプロットが2時間の打ち合わせのなかで生まれており、
そこは「全速力海岸」ってすでに呼ばれておりました。
「じゃあ全速力でホン書いてみますよ」とやわらかい声で中野監督。
(その2へ続く)

2006年03月27日

『世界でいちばん身体にいいこと』(その3)

11月27日。
1日にシーン数7カ所は困難ではあるけれど、なんとか撮れるだろう…製作部はどんどんたくましくなっていきます。しかし、うち5シーンはオープンロケ、11月末でもあり日照時間が心配です。
午前8時、田園調布駅前のカフェにて。ミホ役:宮澤美保、ユキミ役:田中有紀美のシーンからクランクイン。日常的ではない長セリフも完璧に「入って」いて、淡々と現場は進行していきます。リョーコ役:滝沢涼子、コーイチロー役:湯澤幸一郎は共に舞台俳優なので「感情移入しなくていいセリフは難しい」と苦笑い。ヘアメイク:成瀬真紀は素早くメイクの小技を施します。
ヨーコ役:山下葉子、ダイスケ役:響大祐は全篇クルマの中の演技です。カメラをボンネットやフロントグラスに装着する機材に手間取ったり、美術:富田麻友美の手作り仕掛けも試行錯誤となったり、日没が気になり始めました。
リュージ役:古澤龍児、ミレイ役:朝岡美嶺、トシヒコ役:小澤敏彦の3人は病院へ続く並木道を歩く患者という設定です。人員不足(予算不足?)から、人止めが難航。OKが出た時は日没ギリギリでした。
京橋の映画美学校へ移動。ヨーコとダイスケの妄想シーンは真俯瞰とクローズアップ。メイクの小技はこのシーンへと微妙に繋がっていますので、お見逃しなく。病院を模したシーンでオフに被る医師の声は、現場でのオーディションの結果、キャスティングディレクター、監督助手、そしてラインプロデューサーです。
午後8時、撮了。俳優部は、すっきりした顔で帰っていかれました。一日中、ショーペンハウエルの教えに従ったせいかもしれません。嘘。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年03月24日

『宇宙のはじまりとおわり』(その3)

9月30日。
銀幕のスタアがいると現場が締まります。300本以上の劇映画に出演した隆三役:宍戸錠の存在感は、小さな映画を力強くしてくれました。脚本やセリフ、カット割りのことまで、矢部監督と細かく話し合います。そして、ベテランの教え。撮影予定時間前に、誰よりも早く芝居場に立つ宍戸錠の姿は、スタッフ・キャストに映画の基本を教えてくれました。
まだ太陽は昇っているのに夜のシーンを撮ります。前述した疑似夜景です。あり得ない時間帯の映像。不思議なトーンになっていました。あるシーンをきっかけに、二組のカップルが同じ時間帯に同居するという設定です。違和感があるのはたしかですが、編集でどう表現されるのか楽しみでもあります。
撮影:村石直人と照明:赤津純一も日活撮影所で育ったスタッフです。矢部監督との呼吸もよく、いいテンポで撮影は進みます。いつもはテレビ番組をつくっている監督も、短篇とはいえ、久しぶりの映画の現場は心地よさそうです。<One Day Movie>シリーズの監督構成は、多岐にわたっています。映画・CM・PV・TVの経験が多い方々ですが、やはりプロでしかできない技術を感じました。限られた条件の中で、脚本という設計図を実現させる技術、そしてなによりも現場を壊さずフィルムへ定着させる技術です。プロの監督とスタッフ、キャストでないと成立しないシリーズだと再確認しました。
午前3時。カエルの交尾のカットを、撮了。カエルが実写かCGか、本編をご覧になって判断してください… ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年03月20日

『世界でいちばん身体にいいこと』(その2)

脚本が解決した頃には、制作:金子敏之と氏家大からロケハンリストが上がっていました。カフェや室内シーンのロケ交渉で脚本の内容を説明する時、特殊なセリフの応酬です。説明が難しかった(気恥ずかしかった?)かもしれません。
キャスティング:松本美敏は悩んでいました。登場人物は9名、しかも低予算。俳優部の協力無しでは成立しません。スタイリスト:吉野耀脩も大変です。自動的に衣装の数が増えるからです。二人とも奔走、なんとか衣装合わせと本読みにこぎつけました。その場所は京橋の映画美学校。築数十年のビルです。そのテイストを本田監督も撮影:松永高寛も気に入ったとかで、決まっていなかった室内2シーンのロケ場所に決定。うち1シーンは真俯瞰とクローズアップで、ライティングを変えて、同じ部屋を利用するとのこと。低予算+時間制限のある作品では、移動時間を増やすより、撮影と演出に集中できる方が効果的です。
脚本が完成した時に、すでに音楽が決まっているという希有な作品でもありました。脚本:古川裕也の指定曲は『ラヴェル弦楽四重奏曲2楽章』。演奏が困難で知られる名曲です。また、音楽ソフトによる「打ち込み」での再現も至難とか。「N響クラス」の腕前の演奏家で録音する音楽費はありません…しかし、音楽:茂野雅道はやってのけました。その方法は企業秘密だそうです。本編でお確かめください。
(その3へ続く)

2006年03月19日

『宇宙のはじまりとおわり』(その2)

矢部監督の実況映像配信プランは、将来的に活かせる可能性大でしたが、サイトの実態も見えてなかったので、残念ながら封印。とても面白いアイデアなので、いつの日にか実現したいものです。
監督は旧知の脚本:及川章太郎を招聘。矢部プランのある高校生の一晩の話を咀嚼、プロットを再構成していきました。第一稿は、淡々とした二人の会話に、あるクレジットが入るという独特なものでした。『宇宙戦争』にヒントを得たという企画でしたが、打ち合わせを重ねるなかで、変化していきます。最終的には、矢部監督が加筆、「高校生」と「The日活」の文体がぶつかるところを実験することになりました。脚本とキャスティングは同時進行。隆三役:宍戸錠をイメージしながら執筆したそうです。宍戸事務所へは監督自ら打診、日活繋がりのためか(?)快諾をいただきました。奈緒役:前田綾花、景太役:奥村知史、そして菜穂子役:風祭ゆきも監督念願のキャストです。
製作的な問題は全篇ナイトシーンであること。想定しているシーン数は日没から夜明けまでに撮りきれないと判断、隆三と奈緒子のシーンは「ツブシ」という手法をとることになりました。疑似夜景です。撮影:村石直人はロケハン時にテスト撮影をして、監督も納得。二組のカップルは、文体も画質もすれ違うという解釈です。
(その3へ続く)

2006年03月15日

『宇宙のはじまりとおわり』(その1)

『宇宙のはじまりとおわり』
脚本:矢部浩也+及川章太郎 監督:矢部浩也  
撮影日 2005/9/30  
クランクイン  14:00@荒川河川敷
クランクアップ 翌3:00@荒川河川敷

映画界に「蓮實スクール」という一群があります。蓮實重彦が立教大や東京大で開講していた映画をめぐる授業に参加、映画人となった人々の総称。黒沢清、周防正之、中田秀夫、塩田明彦、青山真治、市山尚三ら、錚々たる監督やプロデューサーたちがいます。監督:矢部浩也もその一人でした。東大在学中に制作した8mm映画は斬新で、日活演出部入社後は助監督として数々の監督たちに師事。『ジョビジョバ・イン・トラッパー 黄金的六人』の原案で注目され、『ラブホテルの夜』は当時の日活若手監督のオムニバス作品として話題になりました。しかし、日活演出部は社内事情で解散…ネットの映画コラム『銀幕のいぶし銀』や雑誌『ユリイカ』での映画評で名前は見かけるものの、もう監督業からは足を洗ったものと思っていました。
ふとしたことで、会ってみると「ニューヨーク大学に留学したものの、映画は撮らず、帰国後は日活傍系の衛星放送局でディレクターみたいなプロデューサーみたいな曖昧な日々ですが、結婚して子供もできました。はい。おかげさまで。」 もう監督業には興味を失ったようです。<One Day Movie>の企画を相談してみても、さほど反応はありませんでした。
数日後、とある小説が送られてきました。中学生たちの「一晩」を描いた物語です。奇しくも、映画化が決まった話を聞いたばかりの小説でした。「原作ものは無理です」「いや、ストーリーではなくて、ネット配信なら、同時進行性みたいなものを追求してもいいかなぁと思って…」なるほど、矢部監督のやりたかったことは、閉じた映画よりも開いた実況映像だったのです。ネットの即時性を活かした1日のドキュメンタリー映像を配信するという壮大な企画でした。
(その2へ続く)

『世界でいちばん身体にいいこと』(その1)

『世界でいちばん身体にいいこと』
脚本:古川裕也 監督:本田昌広 
撮影日 2005/11/27 
クランクイン   8:00@田園調布駅前 
クランクアップ 20:00@映画美学校

監督:本田昌広はCMディレクターですが、『バカヤロー2』『良いおっぱい悪いおっぱい』等の劇場映画やPVなども経験しています。脚本:古川裕也は某広告代理店のクリエイティブディレクターでもあり、作詞やTBS『大帝国劇場』などのTV番組の企画やシナリオを手がけてもいます。異業種の二人らしく、企画開発は、「映画的」ではありませんでした。ネット配信のショートフィルムを前提に、いろんな可能性が探られていきます。本田監督が第1話を担当した日本初のネット配信オムニバス映画『クリックシネマ・好き』(第3話・脚本:長澤雅彦)は、600万回以上のアクセスを記録。実はこの感触から、『短篇jp』の原型になる企画は生まれたそうです。
最初のプロットは、衝撃的でした。面白いけれど、この予算では実現不可能。企画はネットの短篇ならではでした。「ペダンティックなエロもの」8話全体のバランスを考えて、映画的なことよりもコントに近いものがあった方がオムニバスとしてはいいだろう、という判断です。しかし、断念。再度書いたプロットも大胆な「懺悔もの」、これも諸事情ありで企画変更。どんどんリミットが近づいてきます。慌てた本田監督が古川CM作品オマージュ風のリメイク版を書きますが、これも移動箇所と登場人物の多さに製作部NG。シリーズの企画者でありながら、ルールを忘れた脚本を書くことは許しがたい行為です(笑)
ぎりぎりのタイミングであがったのが、本稿です。ネット視聴は、観る人に「降りる」権利があります。映画館で観てもらう感覚でつくると、すぐにカットされてしまうという傾向があるようです。ブラウザの大きさと画面との距離感を考えて、連鎖性のある企画が採択されました。
(その2へ続く)

2006年03月12日

『世田谷リンダちゃん』(その3)

9月1日。
夜更かしのミュージシャンたちは見事に現場集合。撮影準備も順調でした。予定通りの時間に本番開始、その瞬間、電気ドリルのすさまじい音が炸裂。撮影現場の靴屋の正面で、店舗の解体工事が始まったのです。これでは、仕事になりません。もちろん工事の方々も仕事です。それもかなり「強面な」仕事人たち…助監督:高橋貴司の交渉が始まりました。さすがに映画やTVで百戦錬磨の演出部です。本番中だけは、工事を中断していただく作戦で交渉成立。しかし、テストは轟音の中で、お芝居を組み立てなければなりません。監督・キャストの方々はストレスになったはずです。
「音」の問題が解決したと思ったら、今度は「人」です。突然、商店街に人が増えてきました。ロケハン時は閑散とした商店街だったのですが、どういうわけだか、雲霞の如く人が湧き出てきたのです。それも、かなりの割合で「酔っぱらった人」です。まだ午前中なんですけど。これまた濃いキャラクターの方々を必死で止めなければなりません。ある制作部の声:「まるで、ゲームだった。つぶしてもつぶしても、次々により強いキャラが攻撃してくる…」 
こんな状況でも、タナダ監督はテキパキと撮り続けます。ムーンライダーズは結成30年。商店街の幼なじみ役がはまっていました。細かい仕草や語尾まで、お互いの呼吸を感じ合っているようです。ロケ場所が一カ所だったせいか、予定の時間内に撮了。そのまま、打ち上げへ。撮影時間とほぼ同じくらいの時間、映画の話をしていたかもしれません…これもタナダ組の心地よい空気感でした。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年03月11日

『大安吉日』(その3)

9月16日。
矢崎監督はスーツにネクタイで、撮影現場に登場しました。今では珍しいかもしれませんが、かつての映画のスチール写真によると、大監督たちはスーツと帽子が定番です。監督のワンカットを大切に丁寧に撮っていく感じが、上質なスーツを仕立てていく感じにダブりました。
脚本:狗飼恭子もスクリプターのように監督にはりつき、セリフのひとつひとつを吟味し合っています。車中撮影〜現場移動7カ所と、もりだくさんです。そのペースと制作部的段取りとが、少しずつズレていきますが、撮影:石井勲が微妙に修正していきました。これまでのほとんどの矢崎作品を撮ってきた呼吸でしょうか。
オープンロケで、ウェディングドレスを着てお芝居をするのは至難です。そしてそれを捌くのも重労働。スタイリスト:梅原恵とヘアメイク:正田十蘭は、まるで式場で裾を持つ少女たちのように連れ添っていました。日中のシーンをなんとか撮り終えて、ラブホテル〜地下駐車場へと移動。冒頭のタクシーでトンネルへ入るくだりは、光がなくなってしまっても撮れるようにという苦肉の作でしたが、逆に陽が昇ってしまってからの撮影となっていまいました。
午前6時、全カット撮了。撤収完了はぴったり24時間後でした。「ルールは24時間以内」とはいうものの、ほんとにそうなるとは…スタッフもキャストも疲弊していましたが、小さいけれど矢崎作品らしいフィルムになったと感じていたと思います。撮影の翌日、矢崎監督はすべてのスタッフ・キャストに電話をしてくださったことを記しておきます。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年03月07日

『世田谷リンダちゃん』(その2)

「オチがあるような短篇じゃない方がいい気がする」とタナダ監督は第一回目のプロットを書きました。「きっとそんな作品が増えてくるから、ゆる〜い10分間を」「登場人物は役者じゃなくて、10分間観ているだけでもいい、味のある人々がいい」 ある意味、実験です。
靴屋店主役:鈴木慶一はムーンライダーズ主宰。言わずと知れた音楽家です。しかし、映画出演歴も多く、その存在感は『ラブレター(監督:岩井俊二)』のファーストシーンでも記憶に残っています。故・高田渡氏で二人は繋がっていました。『タカダワタル的』をめぐる物語です。快諾。その勢いで、二人はムーンライダーズのメンバーから、商店街の友人役:白井良明と武川雅寛を選出。ジズムの野田美佐子さんが無理をかなえてくださいました。その息子役:山下敦弘は気鋭の映画監督ですが、自作にもひっそりと出演したりしています。タナダ監督自身も山下監督作品『キズナドラマ』に出演したことがあり直接交渉、一日だけならということで、了承。「金髪でナイスボディ、日本語堪能で歌がうたえる、できれば青い目のアメリカ人希望」日本にはなかなかいません。オーディションの結果、リンダ役:ミハエラ・ガブリエラに決定。ルーマニア人ですが…
劇中歌を決める過程でも、音楽家・鈴木慶一の助力がありました。彼の選んだバーズのロジャー・マッギンが唄った「Wild Moutain Thyme」はアイルランド民謡で版権はないはず。音楽:茂野雅道が徹底調査、メロディと歌詞が微妙に改変されていてたことが発覚、このまま唄うことはできません。オリジナルのカヴァーである上野洋子さんの作品を教えていただき、それをガブリエラが覚えることになりました。
ロケハンは一発で決定。浅草のいろは商店街にその名もいろは堂という、設定にぴったりの靴屋がありました。衣装合わせと本読みも和やかで、唯一の不安は夜更かしのミュージシャン達が(失礼!)朝起きれるかだけで、すべてが順調だったのですが…
(その3へ続く)

2006年03月05日

『大安吉日』(その2)

『ストロベリーショートケイクス』でのコンビネーションから、矢崎監督は、脚本:狗飼恭子を指名。プロットづくりが開始されました。2度目の打ち合わせで、監督からひとつのアイデアが出されました。美しく切ない短篇映画になりそうでしたが、結末がどうしても受け入れられなかったので、無礼を承知で、企画変更をお願いしました。
次の企画は『ストロベリーショートケイクス』からのスピンオフ版らしく、監督も脚本家もイメージがくっきりとできあがっているようでした。初稿を撮影:石井勲と吟味、一日撮影という条件で検討してみますが、不可能ということが判明。素晴らしい脚本なのですが、ルールはルールです。監督と脚本家には、無理を強いることになりました。
矢崎監督は一人で都内をシナリオハンティングして、改訂稿を練り直していきます。昼間は炎天下を歩き、夜は脚本:狗飼恭子と打ち合わせ。申し訳ない気持ちでもありますが、監督はこんなちっぽけな短篇映画でも、手を抜くことなく、楽しんでくれていると感じました。
キャスティングは、監督に送られてきた「暑中見舞い」で決定(!)千佳役:宮下ともみ、花江役:河井青葉からのハガキを見せながら、「この二人にしたいんです」こんなキャスティング光景も珍しいです。
ロケハンは難航。予定していたロケ場所が急遽、使用不可能になり、最終決定したのは、撮影の前日です。さすがの敏腕プロデューサー:伊藤直克も慌てますが、即座に情報収集。監督OKが出そうなロケ地を嗅ぎ分けた助監督:原田健太郎の奮闘に感謝です。
(その3に続く)

2006年02月28日

『世田谷リンダちゃん』(その1)

『世田谷リンダちゃん』
監督・脚本:タナダユキ 
撮影日 2005/9/1 
クランクイン   8:00@浅草いろは商店街
クランクアップ 20:00@浅草いろは商店街

「私が映画を撮れなくなっても、世の中から忘れられても、誰も困らない。だから撮り続けたい。」初対面の日、29才の新鋭タナダユキ監督は言いました。2001年に初監督作品『モル』で、ぴあフィルムフェスティバルのグランプリを受賞。その後『タカダワタル的』『月とチェリー』などの話題作で期待されている監督です。周辺情報でも、次回作の脚本を執筆中で、忙しいとのこと。ちょっと意外な言葉でした。
映画監督はおおむね会社員ではなく、フリーランスです。誰にも束縛されず、誰にも支援してもらえない。監督を職業として選んだ以上、撮り続けなければ、生きていけない。自力で映画をつくった凄みを感じました。『モル』は自主映画ですから、監督がプロデューサーのようなものです。しかも、脚本と主演も兼務しながら、完成させています。
DV機材の発達と廉価な編集・音楽ソフトで、いきなり映画監督になってしまう世代が登場しつつあります。資金調達して、DVとファイナルカットを駆使すれば、映画監督の誕生です。その作品をどう公開・商品化していくかという関門がありますが、いちばん難しいのは2本目の映画を撮ることでしょう。
「撮り続けたい。だから、やります。」全部自分の力で映画をつくったことのある経験は強いです。そして、デビュー後の作品で、業界屈指のプロデューサーたちに育てられたことも力になっているのではないでしょうか。この悪条件たっぷりの依頼も、にやり、と引き受けてくれました。
(その2へ続く)

『大安吉日』(その1)

『大安吉日』
監督:矢崎仁司 脚本:狗飼恭子+矢崎仁司 
撮影日 2005/9/16 
クランクイン   7:00@新宿西口 
クランクアップ 翌7:00@お台場

矢崎仁司監督は、寡作の巨匠です。2000年公開の4時間に及ぶ大作『花を摘む少女と虫を殺す少女』以来、昨年の春、魚喃キリコ原作の『ストロベリーショートケイクス』をクランクアップした情報がありました。脚本は作家の狗飼恭子。この組み合わせは気になります。たった一つのコネクションを辿り、あっけなくも会ってくださることになりました。しかし、なにしろ、寡作の巨匠です。気難しい人に違いありません。
『風たちの午後』が1980年、『三月のライオン』が1992年、『花を摘む少女と虫を殺す少女』が2000年…大切に丁寧に映画を撮ってこられた監督です。そんな監督に、低予算・インターネット配信・撮影1日・DV撮影・10分の短篇を依頼するのは、暴挙だし、失礼だという声もありました。
案の定、「僕は短篇映画を撮ったことがありません」と矢崎監督。やっぱり、駄目かなぁと思いつつも、このシリーズの企画意図を話し続けました。そして、
矢崎監督が上映会で話した言葉に共感したことを思い出しました。『映画という表現が生まれて、ほんの100年ちょっとです。文学や音楽の歴史に比べれば、まだ黎明期。何をやってもいいんです』そのことを話すと、「そんなこと言ってました?」どうやら、気難しい人ではないようです。
前述のたったひとつのコネとは、撮影:石井勲。『風たちの午後』『三月のライオン』を撮影しています。彼も同席してくれていて、その援護射撃も効いたのか、「むしろ、いい機会だと思います」と監督。
(その2へ続く)

2006年02月25日

『W A I T E R』(その3)

10月31日。
予報は雨。しかし、なんとなく降らない気がしました。撮影監督:中堀正夫は驚異の晴れ男。数々の伝説を残しています。この作品の技術的な特徴は、照明部を起用しない「DOPシステム」で撮影されたことです。撮影監督が光をコントロールします。
年齢差30数才(くどいですね)の監督と撮影監督との関係は、最近あまり見かけない「うまくいっている親子」のようでした。日向監督の演出術や感覚もみずみずしいものでしたが、若い監督の言葉をひとつひとつを聞き逃すまいとする中堀撮影監督も新鮮でした。現場で二人の会話を聞いているだけで、いいフィルムになると確信できました。モニターを観ながら、この画に日向作品にはかかせない音楽:野崎美波の曲がつくのか‥わくわくしました。
ラストシーンを撮影するために、店を出て、住宅街の複雑な四叉路へ。やはり、雨は降りませんでした。「その1」の冒頭で記した日向監督の卒業制作を撮影した中堀由衣子さんも見学にきてくれました。なごやかな雰囲気です。久慈(松尾敏伸)の視線となる主観移動は、手持ちカメラでの全力疾走。残りシーン数とカフェの使用時間との兼ね合い、そして体力温存(?)のため、商店街の主観移動は撮影応援:鈴木一朗の全力疾走です。
22時、撮影終了。美術:富田麻由美と延賀亮が劇中名「cafe muse」の看板から同じ材質で造った「m」だけをはずし、店は本来の名前に戻りました。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年02月24日

『プリーズ、ウェイク・アップ』(その3)

9月24日。
朝から雨です。室内の撮影なので問題はないのですが、実は山内監督が、遅れてくる女:西野まり(山内劇場でおなじみの女優さんです)のシーンは、できれば雨がいい、と言っていたので、夜まで降り続けてくれるといいなぁなどと思っておりました。普段は晴れを望むのに。
撮影:小倉和彦はCMと映画をこなす早撮り名人です。照明:小山田智とのコンビも長いので、信頼できます。2カメですので、もう1台のカメラを塚本晋也監督作品で鍛えられた志田貴之が担当。山内監督は、テレビドラマの撮影方式も熟知しているので、2台のカメラの位置とサイズを的確に指示していきます。苦労していたのは、録音:永口靖、なにしろ2台のカメラはほぼ全篇手持ちで、寄ったり引いたり。マイクの入る場所がありません。美術:福澤裕二の隠し味は「灰皿」と「シャンパン」でした。灰皿はゴム製。なぜかは、ご覧になった方はわかるはずです。監督は「あのシーン」を一発撮りにこだわりました。シャンパンのラベルは、セリフ通りに「群馬産・最高級」の文字が…写っていませんけれど、俳優部には細かいところまで、伝わっていると信じています。
撮影快調。本読みの時、すでに3人の俳優はきっちりセリフが入っていて、さらに監督が修正していったので、本番はスムーズです。一日で撮るために、各組とも衣装合わせと本読みはきちんとやりました。テンポよく撮り進めて、劇場に入ってからも、すべてが順調です。時間が余ってしまい、予定のなかったカットも撮るなど、余裕のスタッフたち。監督念願の雨のシーンも狙い通り撮影できました。心配をよそに、予定表より2時間も早く撮影終了。撤収の時には、すっかり雨もあがっていました。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年02月21日

『W A I T E R』(その2)

ロケハンは、めぼしい喫茶店を探しては、監督と撮影監督がお茶を飲みに行くという感じで続きました。悪条件下の仕事とはいえ、なんとも微笑ましい光景です。年齢差30才以上のコンビはキャリアを超えて、お互いを尊重しながら、丁寧にフィルム創りを楽しんでいるようでした。ロケハンやキャスティングの進行にともない、脚本も次々と改訂されていきます。決定稿は、7稿目。こちらも丁寧に推敲されていきました。
久慈役:松尾敏伸と彼女役:小山田サユリは、監督の希望通りに決定しました。お二人は監督の意志と脚本に共鳴してくださり、この短篇を豊かにしてくれました。マスター役:ボバさんこと田中要次、常連客役:戸田昌宏は、渋く脇を固めてくれました。会社員役:柳沢茂樹は、監督が当時上演されていた芝居を観に行き、発見。二人の女性客役:笠木泉と小松梨乃は、過去の日向監督の短篇にも出演されています。
ロケ地は、下北沢のカフェユーズに決定。制作担当:金子敏之が探してきました。50〜60年代の雑貨や食器が満載されているカフェです。オーナーの趣味と鑑識眼が滲み出ています。この店の持つ雰囲気やコーヒーカップが、この物語を支える要素となっていると思います。
このお店には裏コンセプトがあるそうです。「オートバイ屋の三代目の息子がカフェ好きで、カフェを始めてしまった、という設定。」なるほど。まるで、もう一つの映画が始まるようでした。
(その3へ続く)

2006年02月20日

『プリーズ、ウェイク・アップ』(その2)

脚本は初稿から説得力がありました。問題は過激な表現があることと、シーン数が多く1日で撮りきれるかどうか、総尺が長過ぎるのではないか…でした。細かく打ち合わせをしたところ、改訂稿を書いてくれるとのこと。すぐに、送られてきた脚本は、セリフが数行、実景シーンが一つ、削られていただけでした。山内監督は計算していたのだと、思います。重要なシーンはカット割りされていたのですが、山内監督のCMのトーンのように、かなりカット数も多いです。困惑する助監督:高橋貴司、しかしカメラ2台で撮影すれば、実現可能という結論に。総尺のことも、監督のCMや舞台のテンポを考えると解決しました。
過激なシーン…娘・ようこ役のキャスティングが難航しました。母・シズエ役は山内劇場の常連:深浦加奈子、マジシャンと山形役:古館寛治(この二役も見所です)を当て書き、監督自ら調整をしてくれていました。キャスティングディレクター:山内雅子は舞台の役者をCMで起用、成功させています。しかし、よう子役の設定は18〜20才と若く舞台女優があまり豊富ではない年齢層です。脚本通りのお芝居を憶えてきてもらい、相手役をたててのオーディションの結果、よう子役:初音映莉子に決定。
安心していたところ、制作上の問題が浮上しました。「劇場」のロケセットがキャストのスケジュールに合わないのです。ぎりぎりまで交渉とロケハンを繰り返し、プーク人形劇場に決まりました。しかし、使用時間制限が19〜23時という厳しい条件です。せっかくの脚本を実現できるのかどうか、不安になりました。
(その3へ続く)

2006年02月15日

『W A I T E R』(その1)

『W A I T E R』
監督・脚本:日向朝子 
撮影日 2005/10/31
クランクイン8:00@下北沢cafe use
クランクアップ22:00@下北沢

数年前、ある大学の映画コースの卒業制作が、映像業界で話題になったことがあります。某撮影監督のお嬢さんが撮影したフィルムのことです。その卒業制作の監督が日向朝子・当時22才。その後、忘れてしまっていたのですが、このシリーズのために若手監督を調査中に、偶然、日向監督の個人サイトを発見しました。その他の作品を観たくて、某撮影監督へ連絡。しばらくして1枚のDVDが送られてきました。掌編集を一気に観て、即座に依頼。
最初の打ち合わせは、小さな声で、ぽつぽつと始まりました。このサイトの趣旨には賛同してくださり、プロットを待つことに。プロジェクトに参加している長澤雅彦監督(「青空のゆくえ」の共同脚本)や筧昌也監督(大学で一年違い)との接点が、功を奏したかもしれません。すぐに送られてきたのは、「誕生日」。小さく可愛いらしい物語でした。まだディテールが薄く、さらに書き込んでもらった脚本をもとに、打ち合わせ。一日で撮影するためには、かなりのシーンを削っていかねばならないことが判明。監督はあと1週間ほど再考したいとのこと。
次の週、メールに添付されていたのは、まったく違う物語でした。「バレンタインデー」。それが、本短篇の骨子でした。驚きました。ナイーブなディテールが散りばめられていて、しっとりとしたフィルムが見えてきます。同時にキャスト候補も提案され、平行して第2稿へと発展します。ある日、スタッフィングの相談をされました。冒頭の某撮影監督こと:中堀正夫の名前が… きっかけになった巨匠です。面識があったので、さっそく趣旨をご説明しました。快諾。問題は超多忙ゆえスケジュール調整だけです。実相寺昭雄監督の『ユメ十夜』の撮影中に、監督単独でスタジオへ企画意図説明へ。文字通り、リアルに親と子の年齢差のある監督とカメラマンの共同作業が始まりました。(その2へ続く)

『プリーズ、ウェイク・アップ』(その1)

『プリーズ、ウェイク・アップ』
監督・脚本:山内健司 
撮影日 2005/9/24 
クランクイン8:00@目白 
クランクアップ21:00@新宿プーク人形劇場

山内監督は、CM制作会社在籍中より、話題作を演出。その後フリーランスとなって、テレビや演劇で、その才能を注目されています。昨夏、初長編となる映画の企画中に、脚本執筆の依頼。興味を示してくれるものの、まだサイトもなく、うすっぺらな企画書だけで交渉です。「うーむ。よくわからないなぁ」その後、幾多の動画配信サイトをチェックしてくれて、返答をもらいました。「まぁ、面白くないのばかりで落胆したけど、まぁ、考えてみます」 
3週間経つが、第一回目のプロットは、なかなかUPしません。お茶を飲みながら、四方山話。低予算ゆえ、プロットの段階でも縛りが生じます。「あれはできない、これはできる」かなり精密に計算しながら、条件を絞り、可能性を探ってくれます。経験値の高さを感じました。まだ、配信日など詳細も未定で、気分的にも余裕があり、ふと、監督が以前書いたプロットの話になる。「決闘もの」。荒唐無稽な面白い話です。テーマやルールを捨てても、撮ってもらいたくなりました。しかし、他の監督たちはすでに、執筆を開始しているので、今さら変更は不可能です。なにしろ、1〜2年間の話です。くだくだと喫茶店で2時間半。まるで、学生の映画研究会のような時間でした。書いてくれるのかどうか、結論は出ず、不安なまま別れました。
2週間後、突然メールに添付されてきたのが『プリーズ、ウェイク・アップ』。ある日、ある瞬間に親子が味合うフラッシュバック。とてつもない悪夢なのですが、随所に不気味な笑いが見え隠れしていました。まさに、ヤマケン・ワールドです。興奮しました。(その2へ続く)

2006年02月12日

『35度の彼女』 その3

11月12日。
「不拘」(映画界用語で、天候に拘らず撮影決行)という厳しい言葉がスケジュール表に記されていました。そして、小雨。川口市のスキップシティ周辺で、バスのシーンが一番手です。スタッフの顔は暗いです。天候不順の中、しかも200カットを一日で撮らねばならない…もくもくと雨で濡れたバスの窓を拭く準備をしていると、なんと、少しずつ晴れてきました。心がけです。
撮影:小林基己(実は理論派。月刊コマーシャルフォトに映像論を連載中。数々のPVや短篇をディレクション、あ、脚本:筧昌也の監督作品『透明人間だもの』もあります)、照明:古野達也(CMやPVで鍛えたリアルだけどキレイな光が信条です)は狭いバスの中にもかかわらず、筧監督の歯切れよい演出で、細かく割られたカットを撮り進めます。しかし、割愛した1カットがありました。注意深い方は気づくかもしれませんが、監督のVFXと録音:秋山和恵のMAで見事にカヴァーされています。
夕刻、県陽高校に移動。回想と妄想シーンを二つの色合いの違う教室で(これも注意深く観てください。この学校を発見・交渉した制作部:金子敏之と氏家大の執念のロケハン勝利?)、撮り分けます。ここでも、信じられないスピードで撮り続けるスタッフ。衣装+ヘアメイク:金具光恵 haruka 木村聡美によるお楽しみ(?)着せ替え大会。カツラ、鼻血、ホクロ、クロコ‥そういえば、監督とのメールのやり取りのなかで、クロコもホクロも「黒子」と変換されることを発見。問いただすと、脚本上の奥深い「狙い」だそうです。
そして、西川口駅前の蕎麦屋へ移動。ラストシーンは気が緩んだのか、さすがに疲れたのか、ややペースダウン。「落ちの落ちの落ち」という粘着なシーンなので、じっくりと楽しみながら撮影されます。スタッフたちは、不可能と思われた200カットを撮り切りました。午前2時、完全撤収。素晴らしい一日にしてくださった、スタッフとキャストのみなさま、ありがとうございました。(了)

2006年02月09日

『birthday girl』 その3  

11月19日。
一日の移動が10箇所くらい、デイシーン、室内ロケセット、ナイトシーンとバラエティたっぷりの
過酷な現場になるやも。普通なら2日はかけないと…ところが、穏やかに進行しました。
制作部の予定表をはるかに超えたスピードで、撮影は進みます。監督の緻密な計算と明解な演出に
よるところが大きいのですが、ナイーブな感情が繊細に撮れていることに注目してください。
撮影:小林基己の意思決定のスピードは驚異的でした。しかも的確なアングルを切っていきます。
照明:中村裕樹(『スワロウテイル』『MISTY』『ココニイルコト』など)は巨匠だけど若いです。
長時間におよぶ撮影現場の疲れを癒す冗談が素敵でした。もちろんシーンごとに「中村印」の
ライティングが感じられます。これも「長澤組」のコンビネーションなのでしょう。
監督助手:宮野雅之(『夜のピクニック』では助監督を勤め、『ヘアスタイル』の短篇で監督デビュー
している期待の星です)は、カフェの従業員役やエキストラをまとめます。彼らは、長澤監督が教えて
いる「エンブゼミ・演技コース」の生徒さんたちです。唯一のアクシデントは、監督が釣り人B役に
当て書きしていた車輛:細谷卓司の急病リタイア。存在感のある人だけに残念でした。
早朝から、翌日の日の出まで。11月半ばの深夜は寒いです。しかもJOSIは出ずっぱり。
自転車で全力疾走した後に、静かなお芝居をしなければなりません。感情のコントロールも難しかった
と思います。ロケバスの中での休憩中は、さすがに疲れた表情でしたが、ヘアメイク:伊藤元が
メイクだけではなく、彼女にエネルギーを充填してくれました。
24時間撮影を覚悟して望んだ現場ですが、スムーズな進行もあって、日の出のシーンを撮るまで、
スタッフは車の中で2時間の仮眠をとる余裕(?)も生まれました。
そして、全カット撮影終了。
小道具で使った携帯電話に劇中撮影の画像が、残っていました。JOSIは、とてもいい顔をしています。
素晴らしい一日にしてくださった、スタッフとキャストのみなさま、ありがとうございました。(了)

keitaiphoto.jpg

2006年02月05日

『35度の彼女』 その2

キャスティングは、難航。マキ役の設定です。ネタばれになるので書きませんが、
なぜキャスティング:松本美敏が困惑したのか、ご覧になった方はわかるはずです。
ヒントは仮題の「45度」から「見えそうで見えない35度」に変更されたことです。
バレてますかね。撮影:小林基己、照明:古野達也、美術:富田麻由美と延賀亮のコンビ。
監督の細かい指定を、さらに細かく打ち合わせしていきます。
しかし、1日で、バス〜教室〜居酒屋のシーンを撮らねばなりません。なるべく移動距離を短縮する
ために、制作担当:金子敏之は、東奔西走。教室を貸してくれる学校は少ないです。懸命のロケハンの
結果、ロケ地は川口周辺。助監督:中村研太郎も膨大なカット数を整理するのに呆然自失。
一方、撮・照は「そりゃ大変だけど、なんとかなるんじゃないの〜」と平然としてます。流石です。
難航していたマキ役は山岸彩子が快諾(意味深)。同級生役は藤川俊生(『美女缶』で筧ファンには
おなじみ)。さて、本番へ。スタッフ全員の本音は「はたして一日でコンテ通りに撮りきれるのか?」だったと思います。その問題のコンテの一部を貼っておきます。(その3へ続く)


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2006年02月02日

『birthday girl』 その2

「この話だと、主演の子の顔をずっと観てられるってのも、大事だよね」 なるほど。
記憶があります。ずーっと女優の顔ばかり観てた映画。でも、なんでハーフ? 
キャスティング:中元浩司は「女の子」を探してくるのが上手です。オーディションの結果、
マリ役はブラジル生まれのJOSI、ジュディ役は渡辺海弓に決定。警官役は山岸拓生を当書き、
ジュディの彼氏役はユニットマネージャーの山田哲郎(動画メールの中でいい芝居してます)、
釣り人Aは中元の強引な自薦、役作りしたものの濃い芝居は、編集でばっさり切られてます。
ハーフのモデルなので、まずスタイルがいいです。衣装合わせでスタイリスト:岩田麻希が用意した
今時な衣装がどれもハマる。話している時に、感じたことは「彼女が日本語がたどたどしいこと」。
普通だと芝居に影響するので、躊躇するところだけど、ピンときました。「言葉が染みる感じ」です。セリフ劇ではなくオフのNaが支配するフィルムの中で、彼女が日本語を一生懸命しゃべる言葉が、
健気に響くのではと感じました。それが監督の狙いだったのかもしれません。
ロケハンは順調。強者ぞろいなので、東京の隅々まで知り尽くしています。冒頭のカフェは芝浦の「スーパーレーサー」。長澤監督の『ショートケイクス』や『世界の中心で愛を叫ぶ』でも
撮影されています。同じ場所でも、映画によって、まったく違う表情を見せるものです。
(その3に続く)

2006年01月31日

『35度の彼女』 その1

『35度の彼女』        
監督・脚本:筧昌也 
撮影日 2005/11/12 
クランクイン8:00@スキップシティ
クランクアップ翌2:00@西川口駅前

『美女缶』がきっかけでした。そして『ロスタイムライフ』、『ハリコマレ!』…28歳!? 
なんとしても会わねば。いきなりメールしました。やや懐疑的な(?)返信をいただき、
まるで出会い系サイトの男女のような探り合いが続きました。
美女缶のノベライズ、BS短篇の撮影の合間に、プロットが3案UP。
どれも、面白くなりそうなものでした。予算との兼ね合いで『45度の彼女』(当初の仮題)に決定。
実は、最初の設定では、川岡大次郎さんが乗っているのは電車でした。
電車を貸し切るには、予算不足。時間的にも厳しいだろうと、バスに変更。
その他にも、面白いアイデアがあったのですが、修正を余儀なくされました。
しかし、質を落とさず改訂稿が仕上がりました。さすがです。
キャスティングも監督自ら交渉してくれたり、悪条件をものともしない、たくましさと才能に感服。
完徹で完成させた絵コンテには驚きました。全200カット近いコンテが完璧に整理されています。
まさに筧ワールドのイラスト集です。これだけを撮っても、面白いアニメ作品になるんじゃないか…
叱られることを覚悟で口に出したら、やはり、冷ややかな視線を浴びせられました。(その2に続く)

『birthday girl』 その1  

『birthday girl』
監督・脚本:長澤雅彦 
撮影日 2005/11/19 
クランクイン8:00@下北沢アッドカフェ 
クランクアップ翌7:00@お台場

トップバッターは、『ココニイルコト』『13階段』『青空のゆくえ』で
注目されている長澤監督です。この夏『夜のピクニック』(原作・恩田陸)が公開されます。
昨年の夏、『夜ピク』クランクイン直前に、この短篇の依頼をしました。
旧知の方ではあるのですが、なにしろ慌ただしい時期です。
イン前のナーバスな監督に、ちっぽけな作品の依頼をするのは躊躇しました。
しかし、怪しく貧しいプロジェクトにもかかわらず、快諾。
なおかつ激励していただき、なんだか背中を押してくれた感じで、勇気がわきました。
ロケの撮休日に恐る恐る電話したりしながら、じりじりと脚本を待つ日々。
ロケ終了後、「書けたけど、中〜長編になりそうな気配。短篇の企画に練り直したい」とのこと。
スケジュールは延期されます。焦る大野敦子・田中深雪プロデューサーズ。
ぎりぎりのタイミングで脚本があがりました。第一稿が決定稿という完成度で、
しかも、バジェットにも24時間ルールにも収まるはず、という監督の言葉。
これも「演出」でしょうか? スタッフィングも固まっていて、
(撮影:小林基己 照明:中村裕樹という「夜ピク」の豪華なスタッフです)、
すぐにキャスティングが開始されました。「主演のマリはハーフの子がいい」と監督。
意外でした。(その2に続く)