京都映画100 年記念事業「若手才能育成ラボ」レポート(3)
“京都からベルリンへ、世界へ”
「ベルリンタレントキャンパス」とは、ベルリン映画祭の一環として、2002年から始ったプログラム。世界中の才能ある若手の映画製作者(監督、カメラ、美術、音楽などの領域)数百名をベルリン映画祭の期間中に招待、それぞれの分野の専門家がワークショップやセミナーに参加します。過去に、浅野忠信監督が「ユーリ」で講師として招待されたり、舩橋淳監督の「ビッグリバー」がベルリン映画祭共同プロダクション・マーケットに選ばれました。
【公式サイト】
http://www.berlinale-talentcampus.de/
ワークショップ3日目のレポートです。
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9月15日(月)
あっと言う間に「象煮」の最終日である。午後からは雨の予報。
外が映り込むシーンから撮影することに。長屋の外にレールをひき、再びドリー撮影。この日の撮影カット数は少なかったものの、象煮を食べるシーンがあったので多少不安があったのだが、象煮を味噌煮込みで作ってくれた助監督さんのおかげで、役者さんも苦しむことなく食べることができ、何回もの本番に嫌な顔することなく食べてくれた。予報通り雨が降ってきたが、大きなトラブルもなく全カットを撮り終了えた。
まちぶせ組は、前日から撮りきれないんじゃないかという噂が立っており心配していたのだが、大道さんはどんなマジックを使ったのか、気付けば僕らの組より先に撮影終了していた。
小雨が降りしきる中、片付けをして、今回の企画の主催である京都文化博物館へ。講師の方を交えて発表しあう。井上監督と石原監督が同じことをおっしゃっていた。僕らは皆、一回の本番に対する集中力が甘いと。それはやはり、フィルムで育ってきた諸先輩方に対し、僕らはビデオで育ったということが大きいようだ。ビデオは何度もやり直しがきくので、心のどこかにダメだったら撮り直せばいい、という甘えが生まれてしまっていたのだろう。
シンポジウムが終了し、ラボの全てのプログラムが終了した。町屋へ戻り、打ち上げに参加することに。井上監督に今回の僕の演出方法に対してたくさんの批判を頂く。やはり初日に言われていたとおり、もっとおもしろい撮影方法、冒険をしてほしかったとのこと。僕はもちろん井上監督のご助言も取り入れつつ撮影をしていたのだが、やはり結果的に地味でつまらない撮り方ばかりをしたことになってしまった。もう一つ、井上監督がおっしゃっていたことは、「映画を撮るということは、人間を撮ること」という深いお言葉。まずは何よりも、役者を愛すること。スタッフを愛すること。そして役者を映画の道具にしてはいけない。という言葉が胸に染みた。そんな井上監督が「映画に飢えているのは、僕も君たち同じだ」とおっしゃり、同じ目線に立って話してくださった。林海象監督からは「ここにいる全員のことをすごいと思っている。このままずっと作品を撮り続けてくれ」という参加者全員に対するお褒めのお言葉を頂き、どんなに狭き門でもあきらめないことが一番大切、という一番単純だけれど一番難しいであろう教えに、やる気が湧いた。
今回のラボに参加できて、得るものは大きかったです。同じ世代の監督たちと出会い、寝食を共にするなかで、多くの刺激をもらうと共に、横の繋がりができたのが大きな宝です。さらに監督という大役をやらせて頂き、井上監督やプロのスタッフの方から生身の助言をたくさん頂き、その言葉のどれもが、自分にとって本当に勉強になりました。多くの課題もできましたが、それを含め素晴らしい体験をさせて頂きました。
【片岡翔】

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『まぶちせ』なのに追いつめられての最終日。
まずは殺陣のシーン。もちろん初めての経験なので撮影所の方に相談したらば、「心配せんでもええよ、嫌でも石原さんが口出してきよるから♪」「ですよね、『必殺』でも監督や殺陣師のつけた動きをどんどん変えていったって有名ですもんね♪」というわけで安心していたら‥‥開始時間を早めた為、石原監督が来る前に撮影することに!とりあえず自分のプランを元に役者さんに動いてもらいディスカッション、不自然な点を修正して本番。見事一発OK!
気が付けば石原監督も到着、後方でニヤニヤと見学されていました。
そこからは全員でワイワイガヤガヤと突っ走り、ギリギリまで粘りながらも無事クランクアップ。後出しジャンケンですが、実は最初から絶対に撮り切れると確信はしていました(実際、ノーテンキにそんな宣言もしたり)。とは言え、やっぱり感無量。最後まで盛りだくさんのワガママを許してくれたスタッフ・キャストの皆さんには、ただただ感謝。本当にありがとうございました。
一方、長屋で撮影された片岡監督の『象煮』は手際よく淡々と進んだそうで、みごとに真逆の現場だったそうです。撮影所の方も「ここまで違うとはな〜。小津と黒澤みたいや」と妙な関心をしていました。
ちなみに、初日の途中から石原監督は現場を離れ、ほとんど放し飼い状態で私たちのドタバタを見守っていました(ドリーショットになったら移動車を押すために復活!)。いま思えば、もっと直接あれこれ指導して頂きたかった気もしますが、現場で思い切り遊ばせて頂いたことに感謝いたします。
最後に石原監督から言われたのは「本番に向かう集中力と緊張感を保て、本番の大切さをもっと考えなあかん」ということでした。細かなミスにより起きる無駄なNG、何のためのテスト、そして本番なのか‥‥今後、克服すべき課題も残されました。
同世代の若手が集まった3日間の京都ラボ合宿。得たものはとても大きく、そしてこれから始まる『まちぶせ』の仕上げ作業が楽しみです。プロジェクターに投影された数カットのラッシュ、その感動は忘れられません。
ラボ事務局の皆様、そして撮影所の皆様、本当にありがとうございました。
【大道省一】
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天気が次第に悪くなるという予報を受け、日の光が重要なラストカットを大急ぎで撮影。レールドリーを使うカットだったのだが、何とこのレールが木製。接合部も簡単な継手なのだが、これが押してみると凄くかけた力の伝わり方が忠実で、慣れてないとすぐ歪なドリーになってしまう、職人的なレールだった。
撮り直しも含めると時間一杯の撮影になったが、片岡監督は井上監督の意見を取り入れず、長屋以外の屋外ショットは一切撮らなかった。基本的に密室劇なので抜けが欲しくなる井上監督の意見も解る。片岡監督も「意見があれば是非言って」とスタッフにしきりに言っていたので、誰かが強硬に「屋外撮ろうや」と言えば可能だったかも知れない。しかし…勝手な印象論で申し訳無いが、片岡監督の口ぶりは明らかにアリバイ作りだった。多分意見を聞きはするだろうけど通さない。それだけ意思が明確ならファンタジーだしそれを押し通すべき、と僕は思い、余り口を挟みたくなくなった。
そうか、と思う。僕が「ファンタジー」と言う時は「妄想」と言っているのと同義かも知れない。
朝まで飲み明かし、仲良くなった片岡組スタッフのひとりと、京都に住んでいる幼馴染と京都観光しながら考えた事柄。
夢の様な3日間だった。採算だとか、「あわよくば」的な色気だとかを度外視して映像制作に関われたのは何年ぶりだろうか。それはやはり撮影所、そして町屋での集団生活といった部分に依るところが大きいだろう。この様な機会を設けて下さったラボスタッフの方々に改めて感謝。そしてラボに集まった同じ様な境遇の人達にも感謝。年々かつての仲間達が経済的、社会的な理由で映像制作から離れざるを得なくなっている状況で、この縁は今後も大事にしたいと思う。色々と得るものの多い3日間だった。そして僕は妄想と英会話の重要性を改めて認識し、取りあえずiKnow!に登録した。
【吉村真悟】