短篇.jpルーキーズ第2弾 参加監督対談(1)
『東京はみだしゲーム』の田中智章監督(左)と、
『ジャパニーズセラピー』の佐藤克則監督(右)に、企画に参加した感想や制作中の実感を語っていただきました。
お二人とも年齢も近く、自主映画のキャリアも同様です。現在、プロとして活動しはじめている時期で、話は尽きませんでした。2回に分けて掲載いたします。
◆短篇.jpと新人監督支援プロジェクトのこと。
佐藤:僕は「ミルコとクロコとプー」を配信してくれたことが短篇.jpを知るきっかけでした。TSS映画祭で入賞したのを観ていたプロデューサーがいて…サイトが立ち上がった頃からのお付き合いです。
田中:僕は、友人の江藤有吾(*『屋上娘』監督)さんが第1弾に参加して撮ってるって聞いて、えーそんなんあったんやって思って、俺も参加したいなって思ったけど、知らなかったですね、それまで。なんか制作費貰って撮ってるらしいと聞いて、えーいいなと思って。
佐藤:その後に第2弾の募集が?
田中:はい。元々は短篇.jpのプロデューサーが審査員だったTAMA映画祭で知りあって、声掛けて下さったんですよね。こういうのやってるから、応募してみないかって。自主映画を撮っててもよっぽど才能がないと繋がらないじゃないですか。お前撮らないかとは、なかなか言ってくれない。
佐藤:そうですね。
田中:自分から働きかけないと駄目だけど、それなりに入賞し始めて、またコンクール出すのも、もう違うなって思ってた時に、制作費もらって、撮れて、ちゃんとアウトプットできる。インターネットで流れて、DVDにまでなるっていうのは魅力的な企画でした。
佐藤:じゃ、これと短篇.jpの二弾が、自分の予算じゃなく、人の予算でっていうのは、初めてだったていう感じですか?
田中:そうです。佐藤さんはプロとして映像の仕事をしてたんですか?
佐藤:いえ、文化庁から予算がおりる短篇映画(*文化庁 若手映画作家育成プロジェクト)があって、実質それが初めてでしたけど、ルーキーズの第2弾とほとんど同時期でしたね。田中さんは違いを実感しましたか?
田中:どうなんですかね。自主映画監督のタイプは多分二つあって、本当にメジャーでは出来ないインディペンデントな事をやるから、俺は一生自主映画で、自由な立場で撮り続けるというのと、言い方悪いけど、プロになる為の足掛かりとしての自主映画監督がいて、俺は後者でした。何としても人からお金をもらって撮らなきゃっていうのはあった。自主で長編を撮って、自分のやりたい事はそれでやりきったというか、自分の限界が見えたっていうか、なんかもう自分自分っていうのはもういいなって思ってた時期とちょうど重なった。他からもっと枠を与えてもらったりしたいなと、甘えじゃないけど、そういう時期でしたね。
佐藤:自分の限界っていうのは?
田中:限界っていうか、もう、ずーっと自主映画撮っていて、賞をもらい始めて、結局、やっていく内に自分がやりたい事が出尽くしていくんですよね。そんな事ないですか?
佐藤:僕は、限界っていうよりかは、自分のイメージ通りに出来ちゃう小手先のテクニックだけ上手くなったりしてました。そういう部分だけ上手くなると、小さくまとまってくんですよね。結局、自主映画ってスタッフも少ないし、カメラも編集も自分でやってとなると、やっぱり自分の出来る事だけで、小さな世界を作ってしまう。
田中:そうですね。
佐藤:それはそれで、それを突き抜かせるっていうのはいいのかなって思うんですけど、でもそういうんじゃないなっていうのも、どこかにやっぱり絶対あって。
田中:なんか自己完結しちゃって、自家中毒みたいになって、苦しいけど、やってる事狭いし、とかね。
佐藤:そうなんですよね。
田中:そこを突き詰め、突き抜けたら、ペドロコスタ、ゴダールとか、それはそれでとても豊かなものができるとは思うんですけど、自分はまあそういうタイプじゃないっていうのは分かってたんで、そろそろちゃんとプロフェッショナルでやりたいなと思って。
佐藤:そうなんですよねー。いや本当に同じ感じでしたよ。
田中:デビューする前にケレンミが無くなりますよね。やりたいこと自主映画でやり尽くして、それなりに整って出ちゃうみたいで。デビューしてから、右往左往がその形になれば格好いいものになると思うのに、デビューする前に完全に…。
佐藤:抜け殻になっちゃいますね。
田中:そうですよね。
佐藤:出来ちゃいますからね。機材やソフト関連も発達しちゃって。
田中:誰でもビデオとデスクトップで映画をつくれるっていうのは、功罪あるかもしれませんよね。
◆ シナリオ開発のこと。
佐藤:「東京はみだしゲーム」のアイディアって、どこからなんですかね? 未来を写せるカメラっていう事なんですか?
田中:友達が、霊能者の凄い当たる人がいて行くっていう時に、俺も面白いからついて行くっていったら、結構ヘビーな事を言われて。それ当たるらしくて、ああでも、運命なんやなって思って。出産前の、お腹の子の男女の性別もぜんぶ当てちゃう人らしくて。信憑性はある感じやったから、ショックで。運命って、ちょっと、はみださへんのかなって思って、その運命が決まってるのなら、もしかして、いつもこうやってる癖を、こっちの道をこっちに絶対帰らない道から通ったり、そういう事を積み重ねたら、ちょっとずつ運命はずれていくのかなって思って。もし運命というのが決まって、自分の思う癖とかあって、その通りにいくならそれをずらしたいなっていう。そこが個人的に出発点でした、珍しく。
佐藤:珍しくっていうのは、いつもとは違うやり方なんですか?
田中:そうですね、なんとなくその自主映画をやりきった感じがあって、結局いろいろやっても姉妹の話になったりとか、自分のことだったりとか…。
佐藤:あーなるほど、自分の設定の癖っていうか。
田中:そうですね。鬱であったりとか、そういうのはもういいなぁとか思って。エンターテイメントで。でもどっか自分の種じゃないけど、出発点として、昔はずっと自分が悩んでる事ばっかり書いてましたね。自分がいま悩んでることをモチーフにとか。「ジャパニーズセラピー」とかはどんな感じなんですか?
佐藤:あれは元々選挙だったんですよ。室内で急に選挙が始まるってアイディアで、たまたま選挙期間だったのかな、その書いてる時が。それでって訳じゃないんですけど、前から選挙には興味があって。公的な場所に人間の本性が出る仕組みだなっていうのが、それが面白くて。そういうのをやろうかなっていうのでしたね。でも、次の段階でやりとりするじゃないですか、プロデューサーと。その中でやっぱり選挙っていうのがちょっと偏り過ぎてたテーマっていうか、あんまり広がりがないテーマだっていうアドバイスを受けて、まあそうだなっていうのもあって。
田中:ちょっと視たい気もしますけどね。それはアメリカ批判とか、そこまで意図があったんですか? ブッシュなり小泉なり、ファシズムとか。
佐藤:そこまでじゃないけど、もっと寓話的なテーマにした方がいいというアドバイスを受けて、実験的な事で人が変わるっていうのをこう斜めに見ている様な風にしようっていう事ですけど。どうでした? そういう直される、直されるっていうのも変ですけど、一緒に直していくっていうか。
田中:そうですよね、それは初めてですもんね、自主映画じゃ。
佐藤:無いじゃないですか。
田中:まぁ信用する人にアドバイスを受ける、それとはまた違うですもんね。
佐藤:一緒に作っていくのは商業じゃないとなかなか無い事じゃないですか?それはどうでしたか?
田中:僕は意外に、はいそうですか、っていう感じなんで。なんか言ってもらえることが、ありがたかったんで。段階として、自分の枠、自分の意見とかは信用ならんじゃないけど、大体自分の好みとか分かり始めてきたとこなんで。人から言われたら、自分ではそういうとこに一歩踏み出さないけど、そういうとこに行けばって言われたら、行こうかなと思える。で、そうすることによって、また新しい地平が見えてくる。自分の枠が広がるっていうか、勇気がもらえる。
佐藤:そういうとこで、ぶつかるっていう人もいるでしょうね。結構、自主で自分が王様的な感じでやっていると、大抵ぶつかる壁はここですよね、やっぱり。
田中:でもエゴイスティックに頑固で変えないというよりかは、たぶん対応しきれなくて怖いし、結局自分を守るために、頑固で芸術家的に、いやこれは違うというよりかは…。
佐藤:対応の方法を知らない。
田中:そうそう、対応が出来ないから、怖くなって、ちょっと混乱するんじゃないですかね…
(次回につづく)