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『風見鶏と煙突男』(その3)

6月14日。曇り。
煙突は、無事に建った。天候も狙い通り。喪服と白い空、灰色の煙突とのコントラストが美しい。白っぽい空に昇る煙が表現しにくく苦労する。発煙筒を数本試してみて、やっと、撮影:石坂拓郎のOKが出た。
煙突は意外に高い。半間(約90cm)足場の上に2間の高さで屹立している。なぜだか、撮影現場では未だに尺貫法である。芝居をする煙突男:柄本佑の目の高さは、4m以上。恐怖感がある。安全面でのチェックは当然だ。何度もスタッフが実験してみて、マットや安全ベルトが用意された。それでも「やっぱり、怖いです」と柄本佑。それもそのはずである。彼の目線には、煙突+ビルの高さ(5階)が加わっている。
煙突男を見上げる風見鶏の遺影と参列者たち。その中に音楽:福原まりがいる。富永監督のCMやアニメ、映画音楽を作曲しているピアニストである。日本一遺影の似合う女として、現場にも参加してくれた。男性の参列者は、富永監督所属のピラミッドフィルム企画部の面々である。
撮影シーンの狂気とは裏腹に、現場はいたって穏やかである。監督もゆっくりと、丁寧にお芝居をつくる。石坂カメラマンもゆったりしたリズムであるが、カメラはずっと手持ちで、イントレを昇ったり降りたり、的確にアングルを決めていく。アソシエイトプロデューサー兼務助監督にはもう一つ仕事が増えた。操演である。風見鶏の演技を監督のセリフに合わせて操作する。意外や、楽しんでいる。誰一人、大声を出すスタッフはいない。淡々と現場は進行していく。日没が心配されたが、無事、夕刻までに撮影終了。ラストカットは、見事なタイミングでカラスが鳴いた。
素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)