『バリガー』(その3)
小人の部屋はロケで行う事になり、何とかロケ場所は全て決まった。監督とロケハンをしていて、次第に私は、柿本監督の撮影現場はどのように進んで行くのだろうか?と興味が沸いてきた。はたして全て撮りきれるのだろうか、時間が無くなって来た時には素早い判断が出来るのだろうか?不安ではなく、どのようにうまくやるのか、見てみたかったのだ。
そんな期待もよそに、撮影現場は順調に進んでいった。撮影・照明・美術・録音と24時間という短い時間の中でも信頼や安心の出来るスタッフの皆さんに恵まれたからである。
途中、お弁当を食べるシーンの場所移動の時間を削って急遽駐車場の脇で撮影をしたけれど、なんとか無事に昼間の場面を撮り終え、ナイター撮影に突入。東京タワーが消えて、ナレーション撮りが終わったのは、朝4時を向かえていた。柿本組のスタッフの皆さん、過酷な時間との戦いの中ご協力いただき本当にありがとうございました。無事に撮影終了。
編集の得意な柿本監督がどのようにこの撮影素材を仕上げ、合成するのか、わくわくしながら、編集を待つ事になった。(主人公の部屋は実は1Fで、もちろん東京タワーは実際に見えない。)私は次の安里監督作品の準備も佳境に入った頃、事務所に柿本監督がやってきた。バリガーの完成テープを見せに来てくれた。安里組のスタッフも一緒に上映会が始まった。
リズムの良さに脱帽。私が引いてしまった台詞は音楽のように、映像のリズムに乗って、入ってくる。ズームももちろん完璧に計算されていた。ああ、もう柿本さんの頭はデジタル世代なのだと思い知った。そしてこれからはデジタル世代がやってくると、、、。
最後にまた柿本監督はテレくさそうに「じゃー」と肩をたたいて帰って行った。5年後か10年後かに柿本さんと一緒に仕事が出来れば、きっと新たな発見が出来そうで期待している。柿本ケンサク。目の離せない監督と仕事が出来た。
台本のタイトルを見た友人が「バリガーってガリバーの逆なのね。」と言われた時に初めて気がついた。あれ?逆から呼んだだけだったんだ。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)