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『お別れのバラード』(その3)

脱獄囚たちが逃げ込んだ空き家は線路のそばであった。録音:古谷正志も本田監督の初期作品からのクルーの一人だ。彼の天敵となったのは、電車の通過だったが、田舎ゆえ1時間に2本。中断も少なかった。
撮影現場の雰囲気は、とても温かだった。学生時代から一緒にいるチーム。精神はそのままで、技術と経験値が進化した集団は強い。商業映画の現場にありがちなヒエラルキーによる障害もなく、自主映画にありがちな泥沼な試行錯誤もない。スタッフもキャストも自由に仕事を楽しんでいる。助監督:菊地健雄も活き活きと現場を仕切っていく。
アソシエイトプロデューサー:大野敦子たちは「消えモノ」(劇中の料理)を鋭意制作中。シーン撮了後、スタッフの食事の時に、残った惣菜やみそ汁が振る舞われる。これも、ささやかだけれど、温かい現場の象徴であった。
本業以外の仕事をしてくれたのは、制作・美術・衣裳・特殊造型:安井聡子の他、ヘアメイク:戸田のり子。かつらを被り、幽霊役(ネタバレ注意)を買ってでてくれた。
空き家での撮影を一気に撮影して、ザ・パロッツの面々と合流。ライブハウスへと移動する。これまでのシーンとはうってかわった設定。さながらPVの撮影風景である。早朝から出ずっぱりの山本浩司、そして奮闘してきた本田監督もバンドのコスチューム(ネタバレ注意)に着替えた瞬間、また一段とエネルギッシュになる。
午前4時、撤収完了。ロケバスの中は、さながら修学旅行の帰途のようだった。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)