『お別れのバラード』(その2)
明解な脚本は、ゴールがよく見える。準備も明解に進んでいった。
本田監督を「ホンチ」と呼ぶ制作部:安井聡子も、大阪芸大出身ならば、撮影:川口良介と撮影助手:近藤龍人も同じ時期に大阪芸大で映画を製作していた。近藤龍人は、『どんてん生活』『バカのはこ船』『リアリズムの宿』の撮影でもある。呼吸の合ったスタッフとキャストで固められたのも、運がよかった。
安井聡子の肩書きは、「制作・美術・衣裳・特殊造型」である。学生時代の勢いなのか、低予算の現場では、できる人ができることをやる…という感覚。衣装合わせの日、衣装のみならず、その加工や特殊メイクの材料等を準備して、監督の意に沿うように、実演してみせる姿は圧巻だった。このフィルムは、監督の明晰な設計図や痛快な演出力もさることながら、彼女の八面六臂の活躍にも支えられていた。(あ、重要な役どころで出演もしています)
キャストたちも穏やかな雰囲気。山本浩司は監督作品があり、大堀こういちは自らのユニットHANAKUSONSや桑原茂一のCLUB KINGでは脚本・監督や作曲を担当、緋田康人は映画プロデューサーの経験がある。本田監督との本読みを見ているだけで、笑えた。面白いフィルムになる予感がした。
(その3に続く)