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『お別れのバラード』(その1)

『お別れのバラード』 
監督・脚本 本田隆一
撮影日 2006/4/23
クランクイン   9:00@神奈川県駿東郡小山町
クランクアップ 翌4:00@神奈川県厚木市旭町

『東京ハレンチ天国・さよならのブルース』『セクシードリンク大作戦・神様のくれた酒』『プッシーキャット大作戦』『ずべ公同級生』…タイトルで観る気になるかならないかは、分かれるところである。この60年代の匂いがぷんぷんする作品群を立て続けに観てしまっていた。1974年生まれなのに、この憧憬と執着。監督に興味をもった。
OneDayMovieシリーズ『世田谷リンダちゃん』(監督:タナダユキ)に出演していただいた山下敦弘監督に、大阪芸術大学映画学科のことを取材していた。98〜2000年に発表された『鬼畜大宴会』(監督:熊切和嘉)、『東京ハレンチ天国・さよならのブルース』(監督:本田隆一)『どんてん生活』(監督:山下敦弘)は「卒業制作」である。さらに、山本浩司、元木隆史、向井康介、山本剛史、宇治田隆史…とんでもない才能を輩出している。奇跡の世代かもしれない。
大阪で「トキワ荘」的な映画漬け日々を過ごした監督たちが、東京で活躍している。彼らと仕事をしてみたいと思うのは自然だし、安直だ。そして当たり前のように売れっ子の監督となっていて多忙。このちっぽけな企画の趣旨に賛同してくださっても、実現は難しかった。
『全速力海岸』(監督:中野裕之)の撮影現場で、ディケイドの佐伯社長と雑談。所属俳優の山本浩司と本田監督のバンドの話になる。監督と俳優スケジュールの空白の部分をピンポイントで狙う作戦である。可能性大とか。一方的に、身勝手に、企画は進展した。
柔らかい監督。こちらの思惑もやんわりと吸収してくださり、より刺激的な展開を見せてくれる。一回の打ち合わせ後、すぐに第一稿が送られてきた。面白い。「何かが起こりそうで起こらない」ことで、ぐいぐいと観る人を引っ張っていき、最後は、唖然と煙に巻くシナリオだった。返信すると、さらに設定はほぼ同じではあるが、まったく解釈の違うシナリオが添付されていた。これも不思議なフィルムになりそうだったが、あえて、第一稿を推敲していただくことにする。このスピードと完成度の高さに、感服。現場の心配事は霧散した。
(その2に続く)