『橘くんのバカ。』(その2)
『時間の使い方の最も下手なものが、まずその短さについて苦情をいう。』誰が言ったか知りませんが、昔の人はうまい事をいうものです。この格言に従うと僕なんかは、最も下手な人間の一人かもしれません…。
軽やかにスタートを切った(かに見えた)村松組ですが、ご多分にもれず苦難の連続となりした。その多くは時間のなさが原因だったりするのですが…。
3月上旬、福岡で再会した監督と慌ただしくシナハン、その日の夜にプロットに関して打ち合わせ。あっさりとまとまって、ここまでは順調。東京に戻った村松監督から第一稿が送られてきて…。ここからが、僕たちの苦しい戦いのはじまりでした。
まずはシナリオ。“1日で撮影”“およそ10分の作品”この条件をクリアーしているのか、監督とシュミレーションを繰り返し、何度も書き直していただきました。『プロットの持つ素敵な世界を壊さず、なおかつ、物理的な条件をみたす』あたりまえの事ですが、やってみるとこれが本当に大変。限られた時間のなか、最後まで辛抱強く、僕達に向き合ってくれた村松監督に感謝です。最終稿があがったのが撮影3日前、時間的にはギリギリのタイミングでした。
シナリオの進行と平行して、スタッフ、キャストも進んで行きます。比較的あっさり決まったスタッフに対して、キャスティングは難航です、主演のカスミ役がなかなか決まらず、決まったのが撮影4日前、これもギリギリでした。無理な条件(福岡、3日拘束)にも関わらず、最後までがんばってくれた吉川事務所の皆さんに感謝です。
そんな準備に追われているうちに、時間はどんどん過ぎて行きます…。
『何故1日は24時間なのか?』と現実逃避的思索をめぐらしているうちに、監督以下ぞくぞくと福岡入りです、もう待ったなし。撮影前日に本読みと最終確認。顔を合わせて、一つ一つ確認していくと、大丈夫な気になってきます。こんなに便利な時代になっても、やはり直接あって話し合うという、アナログな事が大事なんだと実感します。後は当日の天気、こればっかりはどうしようもありませんが…。予報は雨…、撮影日を仏滅にしたせいかどうかは分かりませんが、ともかく雨。苦渋の決断で1日順延、明後日の天気にすべてをたくすことになりました。(その3へ続く)