『宇宙のはじまりとおわり』(その3)
9月30日。
銀幕のスタアがいると現場が締まります。300本以上の劇映画に出演した隆三役:宍戸錠の存在感は、小さな映画を力強くしてくれました。脚本やセリフ、カット割りのことまで、矢部監督と細かく話し合います。そして、ベテランの教え。撮影予定時間前に、誰よりも早く芝居場に立つ宍戸錠の姿は、スタッフ・キャストに映画の基本を教えてくれました。
まだ太陽は昇っているのに夜のシーンを撮ります。前述した疑似夜景です。あり得ない時間帯の映像。不思議なトーンになっていました。あるシーンをきっかけに、二組のカップルが同じ時間帯に同居するという設定です。違和感があるのはたしかですが、編集でどう表現されるのか楽しみでもあります。
撮影:村石直人と照明:赤津純一も日活撮影所で育ったスタッフです。矢部監督との呼吸もよく、いいテンポで撮影は進みます。いつもはテレビ番組をつくっている監督も、短篇とはいえ、久しぶりの映画の現場は心地よさそうです。<One Day Movie>シリーズの監督構成は、多岐にわたっています。映画・CM・PV・TVの経験が多い方々ですが、やはりプロでしかできない技術を感じました。限られた条件の中で、脚本という設計図を実現させる技術、そしてなによりも現場を壊さずフィルムへ定着させる技術です。プロの監督とスタッフ、キャストでないと成立しないシリーズだと再確認しました。
午前3時。カエルの交尾のカットを、撮了。カエルが実写かCGか、本編をご覧になって判断してください… ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)