『世田谷リンダちゃん』(その3)
9月1日。
夜更かしのミュージシャンたちは見事に現場集合。撮影準備も順調でした。予定通りの時間に本番開始、その瞬間、電気ドリルのすさまじい音が炸裂。撮影現場の靴屋の正面で、店舗の解体工事が始まったのです。これでは、仕事になりません。もちろん工事の方々も仕事です。それもかなり「強面な」仕事人たち…助監督:高橋貴司の交渉が始まりました。さすがに映画やTVで百戦錬磨の演出部です。本番中だけは、工事を中断していただく作戦で交渉成立。しかし、テストは轟音の中で、お芝居を組み立てなければなりません。監督・キャストの方々はストレスになったはずです。
「音」の問題が解決したと思ったら、今度は「人」です。突然、商店街に人が増えてきました。ロケハン時は閑散とした商店街だったのですが、どういうわけだか、雲霞の如く人が湧き出てきたのです。それも、かなりの割合で「酔っぱらった人」です。まだ午前中なんですけど。これまた濃いキャラクターの方々を必死で止めなければなりません。ある制作部の声:「まるで、ゲームだった。つぶしてもつぶしても、次々により強いキャラが攻撃してくる…」
こんな状況でも、タナダ監督はテキパキと撮り続けます。ムーンライダーズは結成30年。商店街の幼なじみ役がはまっていました。細かい仕草や語尾まで、お互いの呼吸を感じ合っているようです。ロケ場所が一カ所だったせいか、予定の時間内に撮了。そのまま、打ち上げへ。撮影時間とほぼ同じくらいの時間、映画の話をしていたかもしれません…これもタナダ組の心地よい空気感でした。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)