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『大安吉日』(その3)

9月16日。
矢崎監督はスーツにネクタイで、撮影現場に登場しました。今では珍しいかもしれませんが、かつての映画のスチール写真によると、大監督たちはスーツと帽子が定番です。監督のワンカットを大切に丁寧に撮っていく感じが、上質なスーツを仕立てていく感じにダブりました。
脚本:狗飼恭子もスクリプターのように監督にはりつき、セリフのひとつひとつを吟味し合っています。車中撮影〜現場移動7カ所と、もりだくさんです。そのペースと制作部的段取りとが、少しずつズレていきますが、撮影:石井勲が微妙に修正していきました。これまでのほとんどの矢崎作品を撮ってきた呼吸でしょうか。
オープンロケで、ウェディングドレスを着てお芝居をするのは至難です。そしてそれを捌くのも重労働。スタイリスト:梅原恵とヘアメイク:正田十蘭は、まるで式場で裾を持つ少女たちのように連れ添っていました。日中のシーンをなんとか撮り終えて、ラブホテル〜地下駐車場へと移動。冒頭のタクシーでトンネルへ入るくだりは、光がなくなってしまっても撮れるようにという苦肉の作でしたが、逆に陽が昇ってしまってからの撮影となっていまいました。
午前6時、全カット撮了。撤収完了はぴったり24時間後でした。「ルールは24時間以内」とはいうものの、ほんとにそうなるとは…スタッフもキャストも疲弊していましたが、小さいけれど矢崎作品らしいフィルムになったと感じていたと思います。撮影の翌日、矢崎監督はすべてのスタッフ・キャストに電話をしてくださったことを記しておきます。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)