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『世田谷リンダちゃん』(その2)

「オチがあるような短篇じゃない方がいい気がする」とタナダ監督は第一回目のプロットを書きました。「きっとそんな作品が増えてくるから、ゆる〜い10分間を」「登場人物は役者じゃなくて、10分間観ているだけでもいい、味のある人々がいい」 ある意味、実験です。
靴屋店主役:鈴木慶一はムーンライダーズ主宰。言わずと知れた音楽家です。しかし、映画出演歴も多く、その存在感は『ラブレター(監督:岩井俊二)』のファーストシーンでも記憶に残っています。故・高田渡氏で二人は繋がっていました。『タカダワタル的』をめぐる物語です。快諾。その勢いで、二人はムーンライダーズのメンバーから、商店街の友人役:白井良明と武川雅寛を選出。ジズムの野田美佐子さんが無理をかなえてくださいました。その息子役:山下敦弘は気鋭の映画監督ですが、自作にもひっそりと出演したりしています。タナダ監督自身も山下監督作品『キズナドラマ』に出演したことがあり直接交渉、一日だけならということで、了承。「金髪でナイスボディ、日本語堪能で歌がうたえる、できれば青い目のアメリカ人希望」日本にはなかなかいません。オーディションの結果、リンダ役:ミハエラ・ガブリエラに決定。ルーマニア人ですが…
劇中歌を決める過程でも、音楽家・鈴木慶一の助力がありました。彼の選んだバーズのロジャー・マッギンが唄った「Wild Moutain Thyme」はアイルランド民謡で版権はないはず。音楽:茂野雅道が徹底調査、メロディと歌詞が微妙に改変されていてたことが発覚、このまま唄うことはできません。オリジナルのカヴァーである上野洋子さんの作品を教えていただき、それをガブリエラが覚えることになりました。
ロケハンは一発で決定。浅草のいろは商店街にその名もいろは堂という、設定にぴったりの靴屋がありました。衣装合わせと本読みも和やかで、唯一の不安は夜更かしのミュージシャン達が(失礼!)朝起きれるかだけで、すべてが順調だったのですが…
(その3へ続く)