『W A I T E R』(その3)
10月31日。
予報は雨。しかし、なんとなく降らない気がしました。撮影監督:中堀正夫は驚異の晴れ男。数々の伝説を残しています。この作品の技術的な特徴は、照明部を起用しない「DOPシステム」で撮影されたことです。撮影監督が光をコントロールします。
年齢差30数才(くどいですね)の監督と撮影監督との関係は、最近あまり見かけない「うまくいっている親子」のようでした。日向監督の演出術や感覚もみずみずしいものでしたが、若い監督の言葉をひとつひとつを聞き逃すまいとする中堀撮影監督も新鮮でした。現場で二人の会話を聞いているだけで、いいフィルムになると確信できました。モニターを観ながら、この画に日向作品にはかかせない音楽:野崎美波の曲がつくのか‥わくわくしました。
ラストシーンを撮影するために、店を出て、住宅街の複雑な四叉路へ。やはり、雨は降りませんでした。「その1」の冒頭で記した日向監督の卒業制作を撮影した中堀由衣子さんも見学にきてくれました。なごやかな雰囲気です。久慈(松尾敏伸)の視線となる主観移動は、手持ちカメラでの全力疾走。残りシーン数とカフェの使用時間との兼ね合い、そして体力温存(?)のため、商店街の主観移動は撮影応援:鈴木一朗の全力疾走です。
22時、撮影終了。美術:富田麻由美と延賀亮が劇中名「cafe muse」の看板から同じ材質で造った「m」だけをはずし、店は本来の名前に戻りました。
ほんとうに素晴らしい一日でした。監督、キャスト、スタッフのみなさま、ありがとうございました。(了)