『W A I T E R』(その2)
ロケハンは、めぼしい喫茶店を探しては、監督と撮影監督がお茶を飲みに行くという感じで続きました。悪条件下の仕事とはいえ、なんとも微笑ましい光景です。年齢差30才以上のコンビはキャリアを超えて、お互いを尊重しながら、丁寧にフィルム創りを楽しんでいるようでした。ロケハンやキャスティングの進行にともない、脚本も次々と改訂されていきます。決定稿は、7稿目。こちらも丁寧に推敲されていきました。
久慈役:松尾敏伸と彼女役:小山田サユリは、監督の希望通りに決定しました。お二人は監督の意志と脚本に共鳴してくださり、この短篇を豊かにしてくれました。マスター役:ボバさんこと田中要次、常連客役:戸田昌宏は、渋く脇を固めてくれました。会社員役:柳沢茂樹は、監督が当時上演されていた芝居を観に行き、発見。二人の女性客役:笠木泉と小松梨乃は、過去の日向監督の短篇にも出演されています。
ロケ地は、下北沢のカフェユーズに決定。制作担当:金子敏之が探してきました。50〜60年代の雑貨や食器が満載されているカフェです。オーナーの趣味と鑑識眼が滲み出ています。この店の持つ雰囲気やコーヒーカップが、この物語を支える要素となっていると思います。
このお店には裏コンセプトがあるそうです。「オートバイ屋の三代目の息子がカフェ好きで、カフェを始めてしまった、という設定。」なるほど。まるで、もう一つの映画が始まるようでした。
(その3へ続く)