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『35度の彼女』 その3

11月12日。
「不拘」(映画界用語で、天候に拘らず撮影決行)という厳しい言葉がスケジュール表に記されていました。そして、小雨。川口市のスキップシティ周辺で、バスのシーンが一番手です。スタッフの顔は暗いです。天候不順の中、しかも200カットを一日で撮らねばならない…もくもくと雨で濡れたバスの窓を拭く準備をしていると、なんと、少しずつ晴れてきました。心がけです。
撮影:小林基己(実は理論派。月刊コマーシャルフォトに映像論を連載中。数々のPVや短篇をディレクション、あ、脚本:筧昌也の監督作品『透明人間だもの』もあります)、照明:古野達也(CMやPVで鍛えたリアルだけどキレイな光が信条です)は狭いバスの中にもかかわらず、筧監督の歯切れよい演出で、細かく割られたカットを撮り進めます。しかし、割愛した1カットがありました。注意深い方は気づくかもしれませんが、監督のVFXと録音:秋山和恵のMAで見事にカヴァーされています。
夕刻、県陽高校に移動。回想と妄想シーンを二つの色合いの違う教室で(これも注意深く観てください。この学校を発見・交渉した制作部:金子敏之と氏家大の執念のロケハン勝利?)、撮り分けます。ここでも、信じられないスピードで撮り続けるスタッフ。衣装+ヘアメイク:金具光恵 haruka 木村聡美によるお楽しみ(?)着せ替え大会。カツラ、鼻血、ホクロ、クロコ‥そういえば、監督とのメールのやり取りのなかで、クロコもホクロも「黒子」と変換されることを発見。問いただすと、脚本上の奥深い「狙い」だそうです。
そして、西川口駅前の蕎麦屋へ移動。ラストシーンは気が緩んだのか、さすがに疲れたのか、ややペースダウン。「落ちの落ちの落ち」という粘着なシーンなので、じっくりと楽しみながら撮影されます。スタッフたちは、不可能と思われた200カットを撮り切りました。午前2時、完全撤収。素晴らしい一日にしてくださった、スタッフとキャストのみなさま、ありがとうございました。(了)